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拡大する米銀のフィンテック関連投資と対日比較

2018年06月08日

拡大する米銀のフィンテック投資

米国のシティグループは、2017年に80億ドルをIT投資に支出した。これは、支出全体の2割程度に及ぶという。またJPモルガン・チェースは、2018年にIT投資に108億ドルを支出する見通しだ(注1)。

他方、有望なベンチャービジネスに投資をするベンチャーキャピタルがフィンテックのスタートアップ企業に行った投資総額は、昨年65億ドルほどであった。シティグループ1社、あるいはJPモルガン・チェース1社のIT投資額が、これを上回っている。米銀は競合するフィンテック企業との闘いのために、巨額の出費を強いられている。ちなみにネット決済業務のペイパルの投資支出総額は、2017年に110億ドルにも達している。

効率化、コスト削減の観点も

米銀のフィンテック投資は、イノベーティブで顧客満足度が高い新たなサービスを生み出すものにより投じられ、日本の銀行のフィンテック投資は、コスト削減の目的で投じられる比率が高い、というのが多くの人が従来から抱いてきた認識ではなかったか。しかし最近では、米銀のフィンテック投資も効率化、コスト削減を狙ったものが増えている。それは、単純な事務作業や膨大な書類業務などを自動化するRPAや、分散型元帳技術のブロックチェーンへの投資などである。

シティグループのコルバットCEOは、「来年の支出を減らすために、昨年よりも今年の支出を増やすのだ」と説明している。シティグループの経費率(経費÷収入)は2017年の58%から2018年には57%に低下し、さらに2019年、2020年にも1%程度ずつ低下する見通しであるという。

出遅れを指摘されてきた日本の銀行のフィンテック投資

ところで日本の大手行のIT投資の特徴を海外主要銀行と比較した場合、①規模が小さい、②システム経費の中で外部委託比率が高い、③規制対応、維持・補修等、いわゆる固定費的な支出の割合が高い、といった点が以前から指摘されてきた。

日本銀行の資料(注2)によれば、米銀のIT投資の優先課題で(2014年)、メンテナンスなどを中心とするいわば「守りの投資」の比率は42%であるのに対して、顧客向けサービスの高度化、利便性向上のためのいわば「攻めの投資」の比率は58%を占めている。他方、邦銀のシステム関連経費の目的別内訳をみると(2014年)、維持・運用が70%、安全対策が9%であり、いわば「攻めの投資」である新規開発は、わずか21%にとどまっている。

さらに近年は、利鞘縮小の影響から銀行の収益環境、及び先行きの見通しが一段と厳しくなっていることから、邦銀はIT投資には一段と抑制傾向が強まっている可能性もある。その中で、業務の効率化を進めて顧客の利便性を高めるような、フィンテック関連を含む「攻めの投資」に割く費用は、さらに削減されているはずである。邦銀は、リストラのためのIT投資は一部行っているものの、新たなイノベーションを取り込むためのフィンテック関連投資については、全体として海外主要銀行に後れをとりやすい状況にある。

銀行のフィンテック投資を巡る日米格差は縮小傾向か

しかしこうしたフィンテック投資を巡る内外格差も、足もとでは徐々に縮小してきているようにも見える。既に見た米銀が注力するRPAやブロックチェーンへの投資は、日本の大手行も特に力を入れているところだ。さらに、従来は外注比率が高かったフィンテック投資についても、大手行は行内で研究・調査を進め、自前で開発する傾向が着実に強まっている。大手行はいずれも2018年の新卒採用を大きく絞り込んだが、その一方で技術職の採用を増やしており、IT企業との間で人材獲得争いが起こっている。これも、米国では近年一般的に見られる現象である。

このように見ると、フィンテック投資に関する日本と海外、特に米国との差異は、多方面から徐々に解消されてきているようにも見受けられる。


(注1)"Big Banks Are Bulking Up On Spending for Technology", Financial Times, June 1, 2018
(注2)「銀行の情報システムの将来像 ~FinTechが示唆する未来」、日本銀行決済機構局、岩下直行、2016年11月

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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