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中国企業のドル建て社債、デフォルトのリスク拡大

2018年06月01日

中国企業のドル建て社債がデフォルト

中国の石油・ガス供給会社「中国国儲能源化工集団(CERC)」のドル建て社債3億5,000万ドルが、デフォルト(債務不履行)した。中国本土企業のドル建て債のデフォルトは、香港上場の不動産開発会社「新昌集団(シンチョン・グループ・ホールディングス)」に続き、今年に入ってこれで2社目となった。

デフォルトしたCERC債の償還日は5月11日だった。同社は5月27日に、香港証券取引所への届け出で今回のデフォルトや債券の売買停止を発表した。デフォルトの背景として同社は、中国国内で融資条件が厳しくなり、流動性が逼迫したことを挙げているという。足もとで中国企業は外債発行を過剰に拡大しており、今回のドル建て債券のデフォルトも、同社固有の問題とは言えない。

外債発行増加の背景に規制逃れ

中国企業は外債発行による資金調達を膨らませており、2018年1-4月の発行額は870億ドルと、前年同期(309億ドル)の2.8倍にのぼっている。国有鉄鋼大手の首鋼集団は4月に、1年物のドル建て債5億ドルを発行した。利率は3.95%で米国財務省証券1年物の2%台前半と比べて高いが、中国国内で発行すれば5%前後とより高くなるため、その発行を決めたという。また中国東方航空は3月に、東京証券取引所の「東京プロボンド市場」で、500億円の円建て社債を発行した。

中国企業による外債発行は2017年半ば頃から目立って増え始めたが、その背景には、政府の規制を逃れる動きがある。2017年秋の共産党大会以降、中国政府が国内銀行の貸出抑制、企業の債務圧縮(ディレバレッジ)を促す姿勢を示すなか、中国企業が海外での社債発行に資金調達の活路を見出したのである。

外債発行による資金調達を進める企業の中には、地方政府系の投資会社である「地方融資平台」もある。2018年に入ってからだけでも、青海省や新疆ウイグル自治区、遵義市(貴州省)などの融資平台が外債を発行している。青海省の融資平台の場合には、格付けが低いことから8%近い高い利率での資金調達となった。融資平台は主に地方のインフラ整備などを手掛けており、本来、外貨を調達する必要性はない。それでも外債発行を通じた資金調達に動くのは、政府による債務圧縮策を受け資金手当てが難しくなっていることがある。

中国では1990年代末に地方政府系ノンバンクで債務不履行が発生して、外国銀行などが多額の損失を被った事例があるが、同様の事態が生じることを懸念する向きもある。

さらに中国企業の間ではドル建て社債を、米国金利が上昇し調達コストが高まる前に駆け込みで発行する動きや、対ドルでの人民元安の一巡を受けて発行する動きもみられる。

外債発行で中国企業が為替リスクを抱える

経済協力開発機構(OECD)によると、2009年から2013年の新興国企業(非金融)の海外での社債発行で、およそ半分は海外小会社を通じて行われた。さらにこうした調達された資金は、しばしばキャリートレードつまり利鞘稼ぎに使われている。海外小会社が海外での社債発行で調達した資金を、国内親会社に貸与する。国内親会社は、調達資金よりも高い金利の国内債券に投資をする、あるいは国内の他の企業に貸出すことで、利鞘を稼ぐことができるのである。この面から、中国など新興国企業の外貨建て社債発行は、国内経済活動に使われるのではなく、資産運用に使われる面が相応にある。

ところで、こうしたキャリートレードについて、新興国の海外小会社が海外での社債発行で調達した資金を、国内親会社に貸与すると、それはその新興国への海外からの直接投資として統計には反映される。その結果、直接投資という安定した形で海外からのファイナンスがなされている、と誤解されてしまう恐れがある点が問題だ。それは、新興国の海外ファイナンスの安定性を実態よりも良く見せてしまい、そのリスクを過小評価させることにつながる。

さらに、海外子会社が発行した外貨建て社債によって、国内親会社は為替リスクを負うことになる。また、調達した資金を国内企業の貸出に回す場合には、貸出先の信用リスクも抱えることになる。海外で発行した外貨建て社債の利回りには、こうしたリスクが十分に反映されていない可能性があり、そのリスクは外貨建て社債を取得したグローバル投資家に転嫁される構図である。ちなみに、中国企業が発行するドル建て社債は、シンガポールのプライベートバンクによって購入されている分が多いとの指摘がある。

中国企業のドル建て社債の引き受け業務に傾倒する中国の銀行

ところで、以前は欧米投資銀行が支配的であった中国企業のドル建て社債発行の引き受けで、近年、中国の銀行の台頭が目立っている。中国企業のドル建て社債発行の引き受け業務で、中国の銀行が急速にシェアを高めた背景には、欧米投資銀行などと比べて低い手数料で行っていることがあるようだ。米国における中国企業のドル建て社債発行で中国銀行が受け取る手数料は、米国投資銀行が引き受け業務を行う場合と比べて、平均で半分強程度であるとの指摘もある(トムソンロイター社)。

このように中国の銀行が、引き受け手数料獲得のために、中国企業に外貨建て社債の発行を促している面もある。

中国企業の外貨建て社債のデフォルトが拡大する可能性

中国企業がドル建てを中心に外貨建て社債の発行を増加させている背景には、以上のような要因がある。今後、①人民元に対してドル高が進みドル建て社債を発行した中国企業の元利払い負担が高まる、②米金利がさらに上昇して、ドル建て社債発行の継続(ロールオーバー)が難しくなる、③海外市場が動揺してドル資金調達が難しくなる、④中国経済が減速する、⑤中国国内での資金逼迫、などといった事態が生じれば、中国企業の外貨建て社債のデフォルトはさらに増加してくるだろう。

そうした事態は、中国企業の過剰債務問題を改めて浮き彫りにするとともに、中国企業の外貨建て社債に投資するグローバル投資家に損失をもたらし、グローバルな金融不安のきっかけになる可能性も考えられよう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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