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米国金融規制強化法(ドッド・フランク法)が一部緩和へ

2018年05月25日

ドッド・フランク法が改正

米議会下院は5月22日、「金融規制強化法(ドッド・フランク法)」の規制を一部緩める改正案を、賛成258票、反対159票の賛成多数で可決した。上院は同法案を3月中旬に既に可決しており、トランプ大統領が近く署名して成立する見通しだ。

改正自体は比較的小幅にとどまったものの、2008年のグローバル金融危機(リーマンショック)後にオバマ前政権が進めた規制強化からの転換、という大きな意味を持つ。

中堅・中小銀行に対する規制緩和

改正の目玉となったのは、第1に、ストレステスト(健全性検査)を受けなければならないなど、厳しい規制の対象となる銀行の基準が、現行の資産規模500億ドルから2,500億ドルに引き上げられ、その対象が狭められることだ。これは中堅銀行にとっては負担減少となる。第2は、小規模銀行に対して、住宅担保貸出関連業務や証券トレーディングへの規制が緩和される。これは、小規模銀行の業務拡大を助けよう。第3は、銀行の市場取引規制ルールで自己勘定取引を厳しく規制するボルカー・ルールについては、総資産100億ドル以下などの条件を満たせば適用しないことになる。

他方で、議論されていたが最終的に改正が見送られた項目には、消費者金融保護庁の監督権限を見直すこと、破たん金融機関を破綻処理庁が引き継ぐ仕組みを見直すこと、金融安定監視委員会の判断で、特定機関に対してより厳しい規制を適用する仕組みを見直すこと、デリバティブやデビットカード手数料の規制を見直すこと、などが含まれている。

改正は超党派で進められた

共和党保守派のなかには、ドッド・フランク法を大幅に見直す、あるいは撤廃することを支持する議員も多い。しかし上院、下院ともに共和党の議席が僅差の過半数にとどまっており、さらに共和党内でも意見が大きく分かれる法案であることから、当初から民主党からの賛成に期待した、いわゆる超党派での法案審議が進められてきた。実際、下院での採決では野党の民主党から33人が賛成に回った。

民主党内では、再び金融システムのリスクを高めるような、大幅な規制緩和に否定的な向きが多い。さらに、リーマンショック時の銀行救済に対する国民の批判的な感情はなお残っており、現在銀行が最高益を挙げる中で、再び規制を大きく緩和する、特に大手銀行の規制を緩和することには抵抗を感じる向きも多いだろう。11月の中間選挙を睨んで、共和党あるいはトランプ政権もこうした世論に配慮せざるを得ず、それが当初案よりもかなり小粒な改正となったのであろう。

さらに、11月の中間選挙で共和党が過半数の議席を失うことになれば、改正案の可決はより難しくなるだろう。そのため、小幅な改正にとどまっても、早期に可決して大統領選でのドッド・フランク法見直しという公約を一応果たす形にしておいた方が得策、とのトランプ政権の戦略も背景にあったのではないか。

FRBが「ボルカー・ルール」改正案の採決

しかし、ドッド・フランク法の実質的な修正は、こうした議会での法案可決を通じたものにとどまらない。法案修正を必要としない規制の緩和については、議会ではなく米連邦準備制度理事会(FRB)など規制当局が進めることができる。

FRBは5月30日にボルカー・ルール改正案の採決を行う。ボルカー・ルールを改定する「ボルカー・ルール2.0」と呼ばれる作業に、FRBも含めて5つの規制当局が関与しており、FRBがその先陣を切った形だ。それを主導するのが、昨年トランプ政権が、金融監督担当のFRB副議長に指名したクォールズ氏である。規制当局はマーケットメーク(値付け)取引やヘッジ取引などに関する規制の変更を目指しているとされている。仮にそれが実現すれば、米大手金融機関は今よりもかなり自由にトレーディングができるようになる。

こうした点を踏まえれば、大手金融機関の業務にも影響を与える大規模な金融規制の緩和の流れが、米国では今後も進められていくと理解すべきなのだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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