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QRコードの統一はキャッシュレス化の起爆剤となるか

2018年05月24日

「Bank Pay」が運用開始へ

報道によれば国内3メガバンクは、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済で利用される「QRコード」の規格を統一することで合意した。今年3月には、当時の平野・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長が規格統一を他行に呼び掛けていた。新たに作られるのは、アプリと銀行口座を連動させてQRコードを読みこむだけで支払いが完了する仕組みで、「Bank Pay」という名称が考えられている。2019年度の運用開始が目指されているという。

メガ3行がQRコードの規格統一で合意した背景は様々である。第1は、スマホ決済をより普及させ、政府目標となっているキャッシュレス化比率引き上げに貢献すること、第2は、デジタル通貨(仮想通貨)を用いた各行のスマホ決済の仕組みが、将来統一されていくことを先取りしたこと、第3は、QRコードを用いたスマホ決済で、先行する他のサービスにキャッチアップすること、等である。

国内で広まるQRコード決済

日本で発明されたQRコードを用いた決済では中国が先行しているが、国内でも次第に広がってきている。国内でのQRコード決済で、最も広く利用されているのが楽天ペイだろう。楽天ペイでは、主要6ブランドのクレジットカード決済、主要14ブランドの電子マネー決済に対応しており、コンビニや飲食店で利用できる。また、LINE Pay(ラインペイ)も利用が広まっている。これは、無料通話アプリLINEによるQRコード決済だ。また、QRコード決済の先駆者的な存在としては、Origami Pay(オリガミペイ)も知られている。

銀行によるQRコード決済では、インターネット決済大手GMOペイメントゲートウェイが開発したシステムで、福岡銀行が「YOKA!Pay(よかペイ)」、横浜銀行が「はまPay(ペイ)」をそれぞれ開始している。また同じシステムを用いて、来年2月にはゆうちょ銀行も、QRコード決済サービス「ゆうちょPay」を始める。

QRコードとその規格統一の利点

店頭で直接クレジットカード、デビッドカードを用いて決済する際には、専用の読み取り機を店が用意しておく必要があり、その負担も大きい。QRコード決済であれば、店側がタブレット端末にアプリを導入し、顧客のスマホに表示されたQRコードを読み取るか(動的コード)、あるいは店舗に紙に印刷したQRコードを設置し、顧客にスマホで読み取らせるか(静的コード)となる。いずれにせよ、店側の負担は小さい。

ただし現状では複数のQRコードの規格が併存しており、店頭にも複数のQRコードの紙を貼り出す必要がある。その場合、顧客がどれを読み取ればよいのか混乱するケースもあるようだ。メガ3行によるQRコードの規格統一をきっかけに、QRコードの規格が全体として統一されていけば、利用者の利便性が高まるだろう。

メガの仮想通貨発行はどうなったのか

ところで、QRコード統一を受けて、2019年度にメガ3行が運用を始めようとしているサービスがいったいどのようなものか、報道からは明確には分からない。銀行口座と直接連動させる決済と説明されているが、それではデビットカードをスマホに取り込んで利用するのと変わらないのではないか。その場合、利用者に銀行口座の決済手数料が課されることから、利用者の利便性を十分に高めることにはならないのではないか。

大手行は、仮想通貨、デジタル通貨の発行と称して、より安価な新しいサービスを利用者に提供する作業を進めていたはずである。それが三菱UFJ銀行の「MUFGコイン」、みずほ銀行などの「Jコイン」である。

決済基盤の共通化は未だ難しいか

三菱UFJ銀行とみずほ銀行などは、それぞれ別のスマホ決済の基盤となる仕組みを開発している。三菱UFJ銀行が独自に開発している仮想通貨「MUFGコイン」では、QRコードを使用したスマホ決済が行えるサービスが提供される予定だが、これには、分散型台帳技術であるブロックチェーンが使われている。他方でみずほ銀行が運用を目指している「Jコイン」では、ブロックチェーンなどの技術は使われず、電子マネーに近いものである。

両者は昨年に統一に向けた議論を始めたが、目立った進展はない模様だ。そもそも異なる基盤であることから、それらを統一するとは、一方を捨ててもう一方の仕組みに合わせることにならざるを得ない。そのため、銀行間の覇権争いが激しいなか、簡単には統一は実現しないという面があるのだろう。

スマホ決済、デジタル通貨の基盤では、メガ3行の統一が進んでいないことから、とりあえず合意が容易なQRコードというインターフェイスの部分、利用者にとっての入り口部分でまず統一を先行させる、と言うのが今回のQRコード統一の実態であろう。

しかし、キャッシュレス化の推進による経済全体の効率化、銀行にとってのコスト削減という社会的利益の観点からは、インターフェイスの統合にとどまらず、決済基盤の共通化に向けて銀行が足並みを揃えることが必要となる。現状ではそれが容易ではないということを、図らずもQRコード統一の合意は露呈してしまったという面があるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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