1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. 東京五輪後の国内景気を心配し過ぎるな

東京五輪後の国内景気を心配し過ぎるな

2018年05月23日

東京五輪開催後の反動減対策は必要か?

2019年10月に予定されている消費税率引き上げの反動減対策として、政府は住宅・自動車減税、2019年度当初予算の上積みなどを検討している。さらに政府は、2020年の東京五輪開催後の反動減も警戒して、2020年度当初予算にも景気対策を盛り込むことを検討している。しかしこうした政策対応が、本当に正しいのだろうか。

東京五輪開催後の反動減を丁度相殺するように、政策で需要を作り出すことなどは至難の業である。政策効果が反動減に遅れて出れば、有効な反動減対策とならない一方、政策効果が反動減よりも早く出れば、不要な需要を作り出すだけでなく反動減を増幅してしまう。さらに政策効果が出尽くす時点では、新たな需要の落ち込みを作り出してしまう。このように、東京五輪開催後の反動減を打ち消して景気の振幅を小さくするどころか、逆に大きくしてしまう可能性が十分にあるのではないか。

成長率で見た五輪効果は開催1年前にピークとなる傾向

日本銀行のレポート(「2020 年東京オリンピックの経済効果」、2015年12月)によると、東京五輪開催に関わる建設投資、国内消費、訪日消費などは、2015~2018年の日本の実質GDP成長率を毎年+0.2%~+0.3%ポイント程度押し上げると試算されている。

他方で、過去(1950年~2009年)の五輪開催国においてどのような効果がみられたのかについての研究(Brückner and Pappa [2015])によれば、実質GDP成長率への影響は、五輪開催の既に4年程度前に前年比+2%~+3%程度でピークを付ける傾向がある。

既に見たように、政府は2020年度当初予算に東京五輪開催の反動減対策を盛り込むことを検討しているが、その効果が出るのは反動減にかなり遅れてしまう可能性がある。反動減対策は、むしろ景気の振幅を大きくしてしまう可能性がある点に留意したい。

過去の経験では五輪後の大きな反動減は生じない

一方で成長率ではなく実質GDPの水準への影響に注目すると、過去には五輪開催後も下がらない、つまり反動減が生じない傾向が見られる点も重要である。開催から6年後までは、緩やかな増加基調が維持される。投資に限れば、五輪開催から2年間は低下する傾向があるが、GDP全体への影響は必ずしも大きくはない。さらに、現在の日本では人手不足などの供給制約から、建設投資が先送りされる傾向が強い。つまり建設業には受注残が積み上がっていることから、東京五輪関連の建設投資の一巡後は、その他の潜在的な建設需要が顕在化することによって、過去の五輪開催時と比べても反動減はさらに生じにくいのではないか。

東京五輪の経済効果は過去の五輪と比べて小さい

また、日本銀行は、2020年の東京五輪関連需要によって、開催時の2020年に名目GDPは8兆円程度押し上げると試算している。これはGDP比1.4%程度と推定されるが、過去の五輪開催時の平均である10%程度と比べて相当小さい。

つまり過去の五輪と比べると、2020年の東京五輪の関連需要、反動減ともにかなり小さいと考えられるのである。この点から、広く指摘されている東京五輪関連特需への期待と東京五輪後の反動減による国内経済への懸念は、ともに過大評価されているように思われる。政府の反動減対策も、こうした点に十分に配慮して慎重に検討する必要があり、いたずらに東京五輪後の国内経済に対する国民の不安を煽るようなことになってはならないだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています