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欧州回帰へドイツ銀行が事業再編

2018年05月17日

3期連続最終赤字のドイツ銀行は欧州回帰へ

ドイツ銀行が先月発表した決算は、3期連続での最終赤字となった。また2018年1-3月期の最終利益も僅か1.2憶ユーロと、前年同期比の2割程度にとどまり、収益改善の兆しは依然見えてこない。最大の問題は全収入の5割強を占める投資銀行部門の収益低迷であり、1-3月期には前年比で27%も減少した。

ドイツ銀行の立て直しを託されて先月新CEO(最高経営責任者)に就任したゼービング氏は、問題を抱える海外の投資銀行部門を縮小し、欧州域内で商業銀行業務に経営資源を集中させる考えを表明している。ドイツ銀行は、グローバル金融危機(リーマンショック)前に海外戦略を急加速させたが、そうした海外部門の見直しが遅れたことが、グローバル金融危機から10年近くが経過してもなお経営が安定しない主因の一つである。こうした新たな方針は、米国の銀行と競争していくという過去数10年にわたるドイツ銀行の基本戦略を大きく転換し、欧州ビジネス回帰に大きく舵を切ったものと言える。

米国、アジアでの事業再編を発表

発表資料によると、ドイツ銀行は米金利セールス・トレーディング業務、米国とアジアのコーポレートファイナンス業務を縮小する。また世界の株式事業、プライム・ブローカレッジも圧縮する方向で見直す。これらの事業再編は今年の大幅な人員削減につながるとしている。

また米国事業の縮小の一環としては、石油関連融資で米国の銀行と競うために4年前に設立したヒューストンのオフィスを閉鎖するほか、ニューヨークのオフィスをウォールストリートからミッドタウンに移転することを計画している。

米国でのドイツ銀行の従業員は2017年末時点で1万300人だが、このうち1割程度を削減する計画との報道もある。現時点で既に400人が解雇されたという。また5月に入り人員削減に向けた動きがより表面化し始めたようにも見える。米国でコーポレートファイナンス部門のヘッドであったマーク・フェドロシック氏が、企業向け融資・投資銀行部門の共同ヘッドに指名された。その最大の任務は、人員削減であるようだ。

人員削減はゴールドマン・サックス流

同氏がフィナンシャルタイムズ紙に話したところでは、人員削減にはゴールドマン・サックスの手法を用いるという(注1)。これは、毎年、パフォーマンスの悪い5%の従業員を機械的に解雇していくというものだ。従業員の多くは、明確な基準のもとに、パフォーマンスの悪い従業員が解雇されることをむしろ望んでいるという。

ドイツ銀行は2017年に、パフォーマンスに連動させてすべての従業員にボーナスを支払う方式を止める一方、ほとんどの若手従業員はその例外とした。これが不公平感を生み、多くの有能な従業員の流出を招いたという。こうした経験も踏まえて、厳格にパフォーマンス重視の俸給・雇用体系を採用しようとしているのだろう。米国市場では米大手投資銀行に敗れ、欧州回帰を強いられるドイツ銀行であるが、人員削減では米国流を採用するというのはやや皮肉でもあろうか。

他方で、勝ち組のゴールドマン・サックスも商業銀行業務の拡大を視野に入れ、また証券ビジネスの見直しを図るなど、ドイツ銀行と同様に事業再編を進めている。さらに英国で立ち上げた個人向けデジタル銀行を、ドイツなど欧州大陸にも拡張することも検討しているという。

ドイツ銀行は、米国での投資銀行業務で米国勢に敗れただけではなく、本丸の欧州あるいはドイツのリテール銀行業務でも、米国銀行との競争に今後は晒される可能性がある。


(注1)"Deutsche Bank steps up clear-out to gain on rivals", Financial Times, May 16, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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