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トランプ大統領の輸入自動車への20%関税提案は本気か?

2018年05月15日

難航を続けるNAFTA再交渉

米国、カナダ、メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉は、5月11日に5日間の閣僚会議を終えたが、合意には至らなかった。その後も事務レベルでの交渉を続けており、米国政府は17日までの大筋合意を目指している。17日までに米議会に合意文書を示せなければ、新協定の発効に必要な議会承認が、来年にずれ込む公算が大きいためだ。現状では11月の中間選挙で共和党が下院で過半数を失う可能性は50%を超えているように思われれるが、実際に過半数の議席を失えば、この議会承認を得ることが難しくなる可能性がある。

再交渉で最大の争点となっているのが、自動車の関税に関わる「原産地規則」だ。これは、部品の域内調達比率を62.5%以上にすれば自動車の関税をゼロにするという規則である。米国は大幅な比率引き上げを要求しているが、他の2国は応じていない。米国政府は、他国で作られた自動車部品が、完成車の形で米国にゼロ関税で迂回輸出され、その分、米国内での自動車部品生産やその雇用が失われることを警戒しているのでないか。

トランプ大統領は輸入車に20%の関税を提案

閣僚会議でNAFTA再交渉が合意できなかった11日にトランプ大統領は、ホワイトハウスで世界の自動車メーカー首脳と会談した。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど米大手の幹部ほか、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど日本車メーカーの幹部も出席した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この場でトランプ大統領が、米国への輸入車に20%の関税を課すことや、米国生産車より厳しい排ガス規制を適用することを提案したと報じている。

20%への引き上げは世界貿易機関(WTO)のルールに違反する可能性が高い。また、輸入される外国自動車の価格上昇は、米国の消費者からの批判を招くことにもなることから、こうした提案が実現される可能性が高いとまでは、現段階では言えないだろう。

実現すれば、日本の自動車メーカーに打撃

こうした提案の目的は、NAFTA再交渉での原産地規則見直しと同様に、米国内での生産拡大を促すことにあるのだろう。ただし、トランプ大統領の念頭にあるのは、米国内での生産拡大に必ずしも積極的ではない欧州自動車メーカーである。それにも関わらず、関税や排ガス規制がすべての輸入車に仮に適用される場合には、日本の自動車メーカーに大きな影響が及んでしまう。米国は日本から輸入する乗用車に2.5%、ピックアップトラックなどの一部の大型車には25%の関税を課している。日本の自動車メーカーは過去の対米自動車貿易摩擦を受けて、米国内での生産を大幅に拡大させてきたが、それでも輸出の水準は比較的高い。2017年度の対米自動車輸出は4.7兆円に達する。これは対米輸出全体の30%、自動車輸出全体の38%、輸出全体の約6%である。

仮にトランプ大統領の提案通りの措置が実現されれば、日本の自動車メーカーには大きな打撃となり、日本経済全体への影響も無視できないだろう。自動車分野は今後の日米貿易交渉で農産物と並んで大きな焦点になると見られてきたが、予想外に早いタイミングで同分野での貿易リスクが表面化してきた形だ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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