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先物市場はビットコイン価格急落の原因か?

2018年05月14日

先物取引開始がビットコイン急落の原因とするSF連銀の論文

足もとで価格は安定を取り戻しているが、ビットコインなど仮想通貨の価格が、昨年末に突如急落した理由を突き止めることは、投資家にとって、今後の仮想通貨の投資スタンスを決める観点から欠かせない作業だろう。

サンフランシスコ連銀とスタンフォード大学ビジネススクールの研究チームは5月7日、「先物取引がビットコインの価格をどのように変えたのか」と題する論文を公表した(注1)。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は2017年12月17日にビットコイン先物取引を開始したが、連銀は、先物導入後の価格急騰とその後の下落は偶然ではないとして、先物取引の開始によってビットコインの値下がりに賭ける空売りが容易となり、それが暴落を招いたとしている。

CMEに1週間先行して、シカゴオプション取引所(CBOE)がビットコインの先物取引を始めている。しかしCMEで取引が始まるまでは、先物取引量は限定的だったことから、暴落の引き金を引いたのはCMEでの先物取引と連銀は考えている。

分かれる市場の評価

大手取引所での先物取引がビットコインの価格形成に与える影響については、その開始前から意見が分かれていた。

ビットコインの高いボラティリティ(価格変動率)は、従来、機関投資家にビットコインへの投資を慎重にさせてきた。こうしたなか、大手取引所で先物取引が始まれば価格下落リスクをヘッジすることができるようになるため、スポット(直物)取引を含めたビットコイン取引に新規参入が増え、取引を拡大させることが期待された。その結果、価格が上昇しやすくなるとの見方があった。

他方で、現在ビットコインを保有していない投資家も先物市場でビットコインを売ることができるようになることから、ビットコインの価格上昇に懐疑的な投資家による先物市場での大量売却を招きやすいとの指摘もあった。

実際のところ、先物取引の影響については、開始前も、開始後もその評価は分かれたままである。

依然限られる先物取引量

米大手取引所がビットコイン先物取引を開始してから、5カ月弱が経過したが、現状での取引状況をチェックしてみると、その取引量は現物取引と比較して平均で2.5%と、なお比較的低水準にとどまっている(図表)。

現状で判断すれば、大手取引所での先物取引が大幅に増加し、それが現物取引を活性化させている、とまでは判断できないだろう。しかし規制の不明確さと統一性のなさ、取引の安全性の問題、犯罪への関与など、仮想通貨交換所(取引所)には多くの課題があるなか、先物市場の信頼性は相対的に高いはずであり、先行きは取引が拡大していく余地は小さくないだろう。



価値の不明確さが高いボラティリティの底流に

他方、先物市場での取引量は、足もとまでの平均では現物取引の2.5%程度であるものの、1月中旬頃までは概ね1%前後で推移していた。この取引量のもとで、先物市場が現物市場でのビットコイン価格暴落をリードし続けたと考えるのは、やや無理があるのではないか。

仮想通貨のボラティリティの高さの最大の原因は、その価値が明確でない、というより根源的な点に求めるべきではないか。金融資産のようにキャッシュフローを生まない仮想通貨は、その価値を判断するのは困難だ。従って、投資家は明確な価値の基準、評価を持たずに取引をすることになり、価格がファンダメンタルズを反映して形成される「価格発見機能」も働かないことから、価格は不安定になりやすい。

この点を踏まえると、先物取引の存在如何に関わらず、ビットコインなど仮想通貨のボラティリティの高さは、容易に解消されないだろう。


(注1)"How Futures Trading Changed Bitcoin Prices", FRBSF Economic Letter

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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