1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. 地域銀行が外債投資で損失拡大

地域銀行が外債投資で損失拡大

2018年05月11日

福島銀行が7期ぶりの最終赤字へ

複数のメディアは、福島県の第二地銀、福島銀行の森川社長が辞任し、後任に同じ福島県の地銀、東邦銀行出身の加藤氏が就任する方向で最終調整に入った、と伝えている。ごく最近までは、森川社長再任の可能性が高く、5月の取締役会で内定、6月の株主総会・取締役会で正式決定されると見られたことから、突然の同氏の辞任には意外感がある。

福島銀行は5月14日に2018年3月期決算を公表するが、30億~40億円程度の最終赤字に転落した見込みであり、その責任をとって森川社長が辞任を決めたと見られる。同行の赤字転落は、東日本大震災が起きた2011年3月期以来7期ぶりとなる。ただし、赤字計上後も自己資本比率は規制基準の4%を上回り、9%台を確保する見込みだ。

債券、投信の含み損処理で収益悪化

福島銀行の収益環境が悪化した背景には、①融資先の建設業者などが経営破綻し、不良債権の処理にかかる費用が増加したこと、②採算性が悪化した店舗の資産価値を引き下げる減損処理を行ったと見られること、等もあるが、それ以上に大きな影響を与えたのが、③保有する債券、投信の含み損を処理したこと、であると見られる。

福島銀行は4月4日に、含み損を抱えていた投資信託5銘柄の売却で2018年3月期に6億4,100万円の損失を計上すると発表していた。米国債や日経平均株価と逆の値動きをするタイプの投信などが対象であるという。この処理によって、その時点で見込まれていた6億7,000万円の純利益がほぼ吹き飛んだ。

外債運用での損失は地域金融機関全体の問題

外債を中心とする資産運用の失敗は、地域金融機関全体の問題となっている。特に、米国債など海外債券の運用での損失が膨らんでいる。全国105行の債券運用益は5年前に比べ2,600億円も減り、2018年3月期には赤字になった可能性があるという(注1)。さらに金融庁によると、2018年3月期決算では、銀行が本業で稼ぐ「コア業務純益」とほぼ同じ水準まで債券の評価損が拡大した銀行もあるという。最近の米国金利上昇が損失を生んだ直接的な要因であるが、損失の背景には、運用にかかわるリスク管理体制の不備もあるだろう。

長期化する低金利下での利鞘縮小のもと、地方金融機関は高い利益を見込めるカードローンやアパートローン、あるいはカードローンに傾倒していったが、いずれも金融庁の監督が強化されていわば八方塞がりとなり、外債などよりリスク性の高い証券投資の比率を高めていった。海外での金利上昇と共に、こうした戦略の問題点が表面化した形である。

地域金融機関は評価損の計上を迫られる方向か

海外債券の運用での損失を、損切りして計上するのではなく、含み損のままで抱え続けることで、決算の数字を悪くさせないようにする地域銀行も多かったと見られる。金融庁は2019年3月期から、地銀などが保有する国債や外債の金利変動リスクを厳しく見積もる新規制を導入する。そのもとで、地域金融機関は含み損を抱えられず、評価損の計上を迫られることになろう。福島銀行が投資信託の損失計上を決めた際にも、同行の広報担当者は、「中身は言えないが、金融庁からいろいろ指導されている」と話したとする報道もある。

地域金融機関は近年、投資信託や国内債の益出しを行うことで、コア業務での収益が悪化するなかでも、決算の数字をよく見せる行動をとってきた。しかし今後内外で金利上昇、株価下落などが生じれば、益出しがより困難となっていく一方、含み損の計上を求められることで、最終赤字へと陥っていく地域金融機関が予想以上のペースで増える可能性があるだろう。


(注1)日本経済新聞「外債で損失拡大、前期は赤字か――地銀揺るがす「素人運用」、金融庁、改善命令も検討(真相深層)」、2018年4月25日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

注目ワード : 異次元緩和

このページを見た人はこんなページも見ています