1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. 失われたVIX指数と市場への信頼

失われたVIX指数と市場への信頼

2018年05月08日

VIX指数は高めの水準での推移が続く

今年2月に一気に40近くまで急上昇したVIX指数(別称:恐怖指数)は、その後は安定を取り戻し、現在は15前後を底とするレンジでの変動が続いている。VIX指数は2017年を通じて概ね10程度と、過去の平均である20程度を大幅に下回る水準で推移してきた。この水準と比較すると、現在の水準は高めである。ここから、市場にボラティリティが本格的に戻ってきた、との見方も次第に増えている。

VIX指数はシカゴ・オプション取引所(CBOE)が、米国の主要株価指数であるS&P500を対象とするオプション取引のボラティリティ(価格変動率)を元に算出し公表している指数である。

VIX指数が歴史的低水準を維持していた2017年には、低ボラティリティが続く中で比較的高い収益率を得られる商品が非常に注目されていた。それがVIX連動型(インバース)ETN(指標連動証券)などである。VIX指数が10~20など低い水準にある場合には、その価格は上昇を続け、投資家はかなり高いリターン(収益率)を挙げることができた。しかし今年2月のVIX指数急上昇を受けて、こうした商品には大きな損失が生じ、早期償還もされていった。

VIX指数先物の取引は低迷

VIX指数の歴史的低水準は終焉し、今後は上昇のリスクがあると投資家が考えれば、彼らはVIX指数先物を購入するインセンティブを高める。またVIX指数が上昇する際には、株価は下落する傾向があることから、米株を保有する投資家で、株価に調整リスクがあると予想する向きは、VIX指数先物を購入することでそのリスクをヘッジするとのインセンティブを高めることになる。

ところが、VIX指数先物の建玉残高(未決済ポジション)は、今年2月以降大幅に低下したままであり、そのような投資行動が顕著に起こっていないことを示唆している。その背景にあるのは、VIX指数やVIX連動型商品、VIX指数先物など関連商品に対する投資家の信頼が大きく低下してしまったことがあろう。明確な材料がない中で、今年2月にVIX指数が急上昇し、VIX連動型商品で大きな損失が生じたことは、VIX指数に対する信頼を損ねたことだろう。

さらに、2月にはVIX指数の不正操作疑惑が生じたが、4月18日にVIX指数が急上昇したことで、疑惑は再燃した。この点も、VIX指数に対する投資家の信認を著しく低下させてしまった。CBOEは、VIX指数の算出方法の変更を検討していることを明らかにしている。

2月の調整は投資家の投資行動に大きな影響

一般に、市場のボラティリティが高まると、取引が活発化することで、証券市場や取引所の収益にはプラスと考えられがちだが、実際にはそれほど単純ではない。CBOEの株価は年初から15%程度下落している。これは競争相手であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とナスダックの株価が年初からそれぞれ7.5%、12%上昇しているのと比較すると、かなり厳しいパフォーマンスである。その背景には、VIX指数先物取引の低迷がある。2016年と2017年にはCBOEは高収益を上げたが、その際の収益増加率の3分の1は、VIX指数関連のデリバティブ商品の取引によるものとの試算もある。

冒頭でも指摘したように、市場にボラティリティが本格的に戻ってきた、として、2月のVIX指数の上昇や株価下落をむしろ歓迎する意見も聞かれる。しかし、実際にはそれは、ボラティリティの低下にかなりリスクをとった投資行動をしてきたことを反省させるきっかけとなると共に、市場の信頼を低下させるきっかけともなった。この点から、今年2月の市場の動揺は、投資家の投資行動に大きな影響を与えたイベントであったと考えられるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています