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米国逆イールド化を懸念すべきか

2018年04月26日

逆イールド化(長短金利差逆転)は景気後退入りのサイン

米国では、イールドカーブのフラット化が進んでいる。先週は、財務省証券2年物と10年物の利回り格差が一時0.4%程度と、実に10年振りの低水準にまで縮小した。セントルイス連銀のバラード総裁は、FRBがさらに利上げを進めていくなか、長短金利が逆転する、逆イールド化が向こう半年のうちに生じる、と発言している。金融市場がイールドカーブに注目し、逆イールド化が生じるかどうかに強い関心を抱くのは、それが景気後退の先行指標であると考えているためだ。

10年と2年、あるいは10年と1年の利回りで逆イールドが生じると、1957年以降の経験では、その後に景気が後退に陥るケースが多い。サンフランシスコ連銀によれば、10年と1年の利回りが逆転すると、それは向こう半年から2年の間に景気後退局面が始まるサインになるという。

逆イールド化が景気後退の先行指標となるメカニズム

逆イールド化が景気後退の先行指標となる理由はいくつか考えられるが、2つ例を挙げれば、第1に、短期で資金を調達して長期で資金を貸出す銀行にとって、逆イールドが利鞘の悪化をもたらし、長期の資金貸出を抑制するインセンティブが生じる。これが景気を悪化させるのである。第2に、長期金利は先行きの短期金利の見通し平均値で決まる(正確にはそれにタームプレミアムが上乗せされる)という期間構造モデルの考え方に従えば、逆イールドは、現在の短期金利が長期平均値を上回っているとの市場の判断を反映している。これは、現在の短期金利の水準が高過ぎて、つまり金融引き締めが行き過ぎており、景気を悪化させてしまうというオーバーキルのリスクがあることを市場が感じていることの反映である。

逆イールド化は市場の景況感と金融政策姿勢に影響

しかし、逆イールド化が近い将来の景気後退入りを強く示唆しているとまでは言えない。第1に、逆イールド化が生じても景気回復は続き、その後、逆イールドが解消されるケースもある。これは逆イールド化が誤ったサインを送った場合であり、1966~1967年がこれにあたる。また、逆イールド化は景気回復の中盤頃に既に生じ、そこから景気後退入りまでに相当の時間を要したこともある。1977年、2005年の逆イールド化などが、その例に当てはまる。イールドカーブに基づくニューヨーク連銀のモデルでも、米国経済が来年に景気後退に陥る可能性は、まだ11%とされている。

また、現在の長期金利は、FRBによる国債買入れの影響を強く受けているという点が過去とは異なり、その結果、過去の経験則が単純にあてはまらないとも言える。

しかしそれでも金融市場は逆イールド化を警戒している。また、セントルイス連銀のバラード総裁のみならず、新たにニューヨーク連銀総裁となるウィリアムズ氏も、逆イールド化を警戒している。この点から、逆イールド化は、金融市場の景況感を悪化させ、FRBの金融引き締めをより慎重化させるきっかけとなり得る、という点から引き続き重要な指標である。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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