1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. IMFが米国の財政政策に異例の注文

IMFが米国の財政政策に異例の注文

2018年04月20日

IMFは世界の債務残高増加に警鐘

国際通貨基金(IMF)が先般公表した世界経済見通しでは、2019年にかけて安定した成長が続くという展望が示された。2018年の世界の成長率見通しは+3.9%、2019年も+3.9%と、2017年の+3.8%からほぼ高水準横ばいとなった。2018年、2019年の見通しは、前回1月時点から変化はない。しかし、先行きの経済見通しの下方リスク要因として、債務残高の累積を指摘している。

世界の公的・民間部門の債務残高は、164兆ドルに達した(注1)。これは、10年ほど前のグローバル金融危機(リーマンショック)時の既往ピーク水準を上回っている。この164兆ドルのうち、日本、米国、中国の3か国がそのおよそ半分を占めている。中国については、2001年に1.7兆円だった債務が、2016年には25.5兆円まで急増した。こうした債務を削減する動き、つまりディレバレッジが出てくれば、次の金融危機の引き金になりかねないとIMFは警鐘を鳴らしている。

米国の財政政策を批判

他方でIMFは、先進国政府に向けて、公的債務の削減に取り組むことを強く呼び掛けている。世界経済が良好な状態にある中では、景気刺激を目的とする減税策や歳出拡大策は控えるべきとしている。景気情勢が良いうちは慎重な税財政政策を行い、将来、景気後退が生じた際に財政面での景気対策が実施できるのりしろを残しておくべき、とIMFは主張しているのだ。

IMFがこのように主張する際に、主に念頭にあるのが米国である。実際、IMFは米国を名指しして、その財政政策を批判している。トランプ政権は、昨年末に決定した大型減税策を撤回して増税措置を講じ、さらに財政支出を抑制することで、政府債務残高の削減に取り組むべきと主張している。IMFが、特定国の政策を撤回することを主張するのは、異例なことではないか。

日本の債務残高GDP比率は世界最高水準

こうした考えの背景には、米国の政府債務残高が、先行き急速に高まるとの見通しがある。IMFは、米国の政府債務残高のGDP比率が、2017年の107.8%から2023年には116.9%にまで達すると予測している。その時点で米国の同比率は、イタリアの166.6%をわずかに上回ることになる。さらにその比率は、モザンビークやブルンジよりも高くなるという。

ところで日本の債務残高GDP比率は2017年の236.4%に対して2023年には229.6%と、世界最高水準を維持するものの、その水準は3年連続で低下し、また2023年の水準は2013年の水準を下回る見通しだ。

しかし日本での同比率の低下傾向は、異例の金融政策によって、景気実勢と比較して異常な低金利の水準が維持されることによってもたらされる面が大きい。それは持続可能なものではないだろう。IMFには、米国の財政政策を批判するだけでなく、日本の財政政策、そして金融政策にも厳しく注文をつけて欲しいところだ。

(注1)"IMF warns on world’s $164tn debt pile and urges US to reverse tax reductions", Financial Times, April 19, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

この執筆者の他の記事

木内登英の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています