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米国のTPP復帰は米国が譲歩しないと実現しない

2018年04月18日

米国に有利な条件でのTPP復帰は困難

トランプ大統領は4月12日、担当者に環太平洋経済連携協定(TPP)復帰の可能性を検討するように指示した。ただしトランプ大統領は、「米国にとって大幅に有利な」協定に修正されることが、復帰の条件であると明言している。しかしこれは、TPP加盟11か国からすれば、到底受け入れられるものではないだろう。仮に将来的に米国がTPPに復帰する場合には、それは米国が当初合意したものよりも、かなり不利な条件を受け入れることが必要になるだろう(注1)。

米国がTPPから離脱を決めた後、残った11カ国は交渉を継続して、TPP11を締結した。11カ国のうち6カ国が批准すればTPP11は発効するが、その発効は2019年春ごろになるとみられている。

TPP11の参加国は、主に米国側の強い要請で組み入れられた、当初のTPP協定にあった約20の項目を凍結した。その中には、著作権保護期間の延長、生物学的製剤の知的財産保護強化、国際的な翌日宅配会社向けの障壁緩和、などが含まれる。仮に米国がTPPに復帰すれば、この20項目のうち幾つかは復活するだろう。しかし、もともと米国側のいわばごり押しで加えられたこうした合意を、再び復活させることには11か国内でも反対意見が少なくないだろう。結局は、当初のTPP協定よりも不利な条件でしか米国の復帰を認めない、という国が多いのではないか。

米国のTPP復帰について加盟国内で温度差

米国のTPP復帰に対する11か国の姿勢には、実は大きな開きがある。日本が米国の復帰を望んでいるのは、米国市場へのアクセスが強まり、輸出が拡大するとの期待があるためである。日本以外にも、マレーシアやベトナムには同様な期待がある。

しかし一方で、米国が参加しないことでメリットを受けている国もある点に留意すべきだ。それが最も顕著なのは北米・南米の4ヵ国、つまりカナダ、チリ、メキシコ、ペルーである。これらの4か国は既に米国との間に北米自由貿易協定(NAFTA)などの協定を結んでいることから、米国を含むTPPが発効しても、米国へのアクセスが追加的に強まるというメリットは小さい。他方、米国抜きでTPPが発効されれば、米国からの製品よりも良い条件のもとで、アジア・太平洋地域向けに輸出を拡大させることができる。

このように、米国のTPPへの復帰に関しては、TPP11加盟国の姿勢には、大きな温度差がある。米国は当初のTPPよりも米国に有利でないと復帰しないとしているが、実際には、米国がかなり不利な条件でない限り、幾つかの国は米国の復帰を容易には認めないだろう。そしてTPP11への新規参入には、加盟国すべての承認が必要であり、それぞれが拒否権を持っている。

いずれ日本との2国間交渉へ

こうして考えれば、米国のTPP復帰は、少なくともトランプ政権のもとでは可能性はかなり低いと考えておくべきだろう。そしてトランプ政権がTPP復帰を検討することを表明した最大の目的が、TPP発効によって加盟国向けの輸出環境がより厳しくなると批判する国内の農業関係者、製造業者に対する配慮であるとすれば、TPP復帰が難しいことが明らかになると共に、2ヵ国交渉を通じて輸出拡大を図る戦略へとすぐさま移行することになろう。その際に真っ先にターゲットとなるのは、少なくともTPP加盟国の中では日本である。


(注1)"Re-Entry to Trade Deal Won’t Be Cheap", Wall Street Journal, April 17, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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