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帰ってきたボラティリティ

2018年04月16日

2017年は歴史的な低ボラティリティ環境に

金融市場では「ボラティリティ(価格変動率)」の上昇が、2018年の大きなテーマの一つになってきた感がある。昨年までの極めて低いボラティリティの環境が終わり、ボラティリティが帰ってきた、との認識が投資家の間で徐々に広がりつつある。

2017年は、市場のボラティリティが極めて低かった。市場のボラティリティを測る代表的な指数が、VIX指数(別称:恐怖指数)である。これは、米国のS&P500種株価指数のオプション取引の価格をもとに、今後30日間で市場価格がどの程度変化するかという、ボラティリティ(予想価格変動率)を計算したものだ。

VIX指数は近年低下傾向をたどり、2017年半ば以降は10程度の歴史的低水準を維持していた。その際には、ボラティリティの低さが続く中で比較的高い収益率が得られる商品が注目されていた。VIX連動型(インバース)ETN(指標連動証券)などである。VIXが10~20など低い水準にある場合には、その価格は上昇を続け、投資家はかなり高いリターン(収益率)を得ることができた。

VIX指数は過去の平均水準に回帰か

ところが今年2月の株価急落時には、VIX指数の水準は一時40近くまで一気に上昇した。40という水準は、リーマンショック時の80の半分程度の高い水準である。しかしそれでも、ボラティリティの上昇は一時的、との見方をする市場参加者は相応にいただろう。先行きVIX指数が再び元の水準にまで戻るとの見方をする投資家は、その時点で、VIX指数先物を売るという投資行動をとったのである。

実際、40近くの水準にまで一気に上昇したVIX指数は比較的短期間で落ち着きを取り戻したものの、急上昇から2か月程度が経過した現時点においても、その水準は20前後での推移を続けている。再び2017年の10程度の水準にまで戻る傾向が見られていないのである。

ボラティリティこそが新たなリスク逃避先?

20という水準は、VIX指数が作られた1993年以来の平均水準であることから、市場のボラティリティは2017年までの異常に低い状況から、通常の姿に戻ったとの見方が、次第に支持されてきているように見られる。あらゆる金融資産の期待リターンとボラティリティが著しく低下するなか、投資家は高い期待リターンを求めて、VIX指数連動型(インバース)ETN、あるいは高いボラティリティを求めて仮想通貨などに、投資先を傾けていった面があっただろう。

ところが、「ボラティリティが帰ってきた」との認識が広まり、また「ボラティリティこそが新たなリスク逃避先」という声も聞かれる中で、投資家が再び株式、債券など伝統的なアセットクラスにより目を向け始める可能性がある。これは、当面の株価の安定などに貢献することになろう。

さらにボラティリティ上昇との見方も

しかしそれにとどまらず、VIX指数が現状の20程度からさらに上昇していくとの見方も、足もとで広まってきているようだ。つまり市場のボラティリティが先行きさらに高まることを予想して、VIX指数先物、あるいはそれに連動した金融商品を買う動きが、ヘッジファンドなど投資家の間に広まってきたという。これは、既に持っている株価の下落に備えたヘッジと、ボラティリティの上昇から新たに利益を取りに行く動きの双方であろう。

株式や不動産といった資産価格が、妥当値を長く上回ったオーバーシュートの状態を続けた後に調整に転じた場合、妥当値までの下落で収まることはまれであろう。多くの場合は、相当期間、価格が妥当値を下回ることを覚悟しなければならない。

VIX指数自体が売買されている訳ではないが、VIX指数は、株価が上昇傾向にある際には低位を維持し、株価が下落する局面で上昇する傾向が強くみられる。こうした経験側に照らせば、VIX指数は歴史的な平均水準である20前後で安定を維持するのではなく、それを上回るトレンドに移っていく可能性が確かにあるように思われる。そしてそれは、株価のさらなる調整と平仄を合わせたものとなろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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