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ドイツ銀行の新たな挑戦

2018年04月12日

ドイツ銀行のCEO解任劇

ドイツ銀行は4月8日、ジョン・クライアンCEO(最高経営責任者)を事実上更迭し、新たにリスティアン・ゼービング氏を指名した。それ以前から、業績不振などの責任を巡って、ドイツ銀行監査役会のアハライトナー会長とクライアンCEOとの間の対立が伝えられており、さらに直前には、アハライトナー会長が後任のCEOを探していることが広くメディアで報じられるなど、ドイツの名門銀行のレピュテーションを傷つける醜聞にまで発展していた。

米国投資銀行に大きく劣後

この2月には、ドイツ銀行が3年連続で最終赤字に転じたことが明らかとなった。特に問題とされたのが、投資銀行部門での収入の低迷である。年初から足もとまでの累計でみると、米国のJPモルガンが16億ドル、ゴールドマンサックスが15億ドルの収入を上げる中、ドイツ銀行は7億ドルに留まっている(注1)。さらに投資銀行部門の経費削減も進まなかった。

その結果生じた収益性の格差などを反映して、グローバル金融危機前の2007年年初を起点とした場合の足もとでの株価水準は、JPモルガンが2倍を大きく超えているのに対して、ドイツ銀行は半値近くと、歴然とした差が生じている。

ゼービング新CEOは投資銀行業務の経験を欠く

リテール部門も含め、マイナス金利政策の影響でビジネス全体が低迷を続けるなか、新たにCEOに指名されたゼービング氏に強く期待されているのは、投資銀行部門の立て直しである。しかしゼービング氏は、投資銀行部門の経験を欠いている。ドイツ銀行でのいわばたたき上げであるゼービング氏のドイツ国内での主な職歴は、リテール部門、商業銀行部門である。それ以外は、トロント、東京、米国と海外での経験があるが、東京及びロンドンではリスク管理部門にいたようだ。

米国での投資銀行業務の見直しが注目点

ドイツ銀行では引き続きコスト削減が求められているが、その一環で、収益性が低い一方でリスクが高い、米国での投資銀行業務を縮小すべき、あるいは大幅に見直すべきとの意見が、ドイツ銀行の内部及び外部から寄せられている。米国での投資銀行業務は、ドイツ銀行の投資銀行部門の収入の3分の1を担っている。

ところでゼービング氏は、米国駐在時代に、米国の金融当局者との関係を深めていったと言われている。温厚で出世欲もない、またドイツ銀行に強い忠誠心を持つたたき上げ、と言われるゼービング氏がCEOに指名されたことは、行内では驚きを持って迎えられているようだが、その背景には、ドイツ銀行の米国での投資銀行業務の大幅見直し計画があるのかもしれない。

それを軸に、ドイツ銀行が投資銀行部門の収益を立て直すことができるかは、米国投資銀行に収益面で大きく水をあけられている欧州銀行全体が、大いに注目することになるだろう。


(注1)"Deutsche Girds for Hardship", Wall Street Journal, April 10, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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