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日銀のETF処理スキーム

2018年04月09日

日銀のETF処理スキームに3つの選択肢

日本銀行が買入れたETFは、既に累計で18兆円超(簿価)に達しており、自己資本の8兆円と比べて非常に大きい。そのもとで、将来的には株価の下落が日本銀行を一気に経常赤字あるいは債務超過に陥れるリスクがあることから、このETFをどのように処理していくのかは大きな課題である。

その方策としては、①株式市場に悪影響が及ばないように極めて慎重に市場で売却していく、②株価が下落した際には、政府に損失を補てんしてもらうように取り決めをしておく、③新たな受け皿機関に売却し、日本銀行のバランスシートから外す、の3つが考えられる。このうち第3のスキームがより現実的ではないか。

ETFのオフバランス化で政府に協力を求めるスキーム

この選択肢は、ETFを市場で売却することなしに日本銀行のバランスシートから外すスキームである。ただし、日本銀行が市場を通さずに特定の民間機関にETFを売却できるかどうかは、法的に不確実であり、少なくとも現在のETF買入れの基本要綱を修正する必要がある。そのうえで、仮にそれが可能であっても、日本銀行からETFを買い取った民間機関が直ぐにそれを売却することが可能な場合には、株式市場に相応の影響が及んでしまう。他方で、民間機関に対して日本銀行から買い取ったETFを売却しないように日本銀行が強制することは難しいだろう。

従って、日本銀行が買入れたETFを、株式市場を通さずに売却したうえで、それが直ぐに株式市場に流通しないような仕組みを作るには、政府の協力が必要となるだろう。

「銀行等保有株式取得機構」がモデルか

その際に参考となるのは、2002年に設立された「銀行等保有株式取得機構」ではないか。この組織は、「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」に基づく認可法人として設立され、その目的は以下のように同法律(第5条)で定められている。

「銀行等による対象株式等の処分及び銀行等と相互にその発行する株式を保有する銀行等以外の会社による当該銀行等の株式の処分が短期間かつ大量に行われることにより、対象株式等の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずることがないようにするため、銀行等の保有する対象株式等の買取り等の業務を行うことにより、銀行等による対象株式等の処分等の円滑を図ることを目的とする。」

つまり、銀行等が持ち合い株解消のため、短期間で大量に保有株式の売却を市場で行うと、株式市場に悪影響を及ぼし、銀行経営を不安定化させる可能性があることから、それを回避するための受け皿としての役割を担っているのが、この銀行等保有株式取得機構である。株式を銀行等から市場を通さずに買取り、十分な時間を費やして市場に売却していくことを主な業務としている。

設立時の拠出金は107億円で大手銀行、地方銀行、農林中央金庫、信金中央金庫が拠出した。2002年2月から買い取りを始め、当初、銀行の保有持ち合い株や企業が保有する銀行株を買い取っていたが、後にETFやJ-REIT等へと買い取り対象が広げられた。

買い取り資金は、政府保証付きでの銀行からの借り入れや、銀行等保有株式取得機構債の発行で調達する。買い取った株式を市場に売却して損失が出た場合には拠出金で穴埋めするが、拠出金を超える損失が出ると公的資金で穴埋めすることになる。

新たな枠組みの概要

銀行等保有株式取得機構は民間銀行とその株式持ち合い先の企業を対象とする枠組みであることから、当然のことながら日本銀行がここにETFを持ち込むことはできない。しかし、それをモデルにして新たな機関を新たに作ることはできるだろう。

日本銀行が拠出し、政府保証付きでの銀行からの借り入れや、同機関の債券発行で資金を調達したうえで、日本銀行からETFを買い取り、それを相応の時間をかけて処分していく。処分の過程で拠出金を超える損失が生じた場合には、公的資金で穴埋めすることになるだろう。

既に見たETF買入れの基本要綱では、日本銀行がETFを売却する際には「指数連動型上場投資信託受益権等の市場等の情勢を勘案し、適正な対価によるものとする」と定められている。これは、日本銀行が新たな組織にETFを持ち込む際に、時価で売却することを求めるものである。時価が簿価を相応に下回った時点で売却すれば、日本銀行に損失が発生してしまうため、この枠組みは株価水準が高いうちに始めることが求められる。

しかし、基本要綱では、そもそもETFを売却する際には、信託銀行を通じて市場で売却することが求められていることから、基本要綱を改正して、市場を通じないで新たな機関に簿価で売却できるようなルールを新たに作ることになるのだろう。

無傷での正常化はもはやない

この第3のスキームにおいても、第2のスキームと同様に、日本銀行は自らの失策の後始末を政府に要請することになるという、基本的な構図は変わらない。しかし第2のスキームと比較すれば、政府による救済という印象が少なくとも表面的にはより和らげられ、また公的資金を直接投入するリスクを回避することは、より容易となるだろう。そのため、日本銀行にとってのいわば政治的リスクはより小さくなろう。

それでも日本銀行が政府あるいは国民からの批判を受けることは避けられず、またそれが日本銀行法の改正を通じた独立性の制限に繋がっていく可能性も残される。ただし、大量のETFの買入れを進めてしまった結果、日本銀行がダメージを受けることなく無傷で正常化を進めることなどは、もはや考えられないのである。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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