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日中でのネットビジネス覇権争い

2018年04月06日

新サービスでテンセントとアリババ集団の覇権争い

中国のネット出前サービス、レストラン検索サービスを手掛ける「美団外売」は4月4日、中国のシェア自転車最大手の「モバイク」を買収することを発表した。今後は、例えば、「美団外売」の専用アプリで検索したレストランに行くのに、「モバイク」のシェア自転車を利用する場合には値引きサービスが適用されるなど、双方のサービスを連動させた利用を促し、相乗的なビジネスの拡大を図ることも可能となるかもしれない。

ところで、「美団外売」はスマホ決済大手のテンセントの系列にある。今回の「モバイク」買収も、テンセントの戦略の一部と言えるだろう。他方で、テンセントのライバルであるアリババ集団も、今月2日に、中国最大のネット出前サービスである「ウーラマ」への出資比率を高め、完全子会社にすることを発表した。またアリババ集団は、中国のシェア自転車大手の「オッフォ」にも出資している。

このように、中国でスマホ決済を2分しているテンセントとアリババ集団は、様々な新しいネットサービスの大手を囲い込み、やはり2分しているのである(注1)。新たなネットサービスを囲い込むことで、それぞれのモバイル決済サービスの拡大につなげることができる。さらに、多種多様なサービスから得られる利用者の取引履歴や行動などからより付加価値の高い情報を入手することが可能となり、それを活用することで収入を一段と拡大させることができる。スマホ決済の2大グループによる新サービスの囲い込み、覇権争いは、この先さらに広がりを見せていく可能性がある。

日本でも大手ネット企業がシェア自転車サービスに参入

ところで、日本でも大手のネット企業が、新しいネットサービスに参入する動きが見られている。フリマアプリ大手のメルカリは、今年2月に福岡市でスマホを用いたシェア自転車サービスを始めた(注2)。昨年には中国の「モバイク」が、「モバイク・ジャパン」として福岡市と札幌市でシェア自転車サービスを始めたが、そこにはLINEが出資している。また2016年にはヤフーが、子会社を通じて首都圏などでシェア自転車サービスを始めた。古くは2011年に、NTTドコモが、「ドコモバイクシェア」というサービスを、都内などで開始している。

日本の大手ネット企業が、シェア自転車サービスに相次いで参入する背景は、中国と同様である。決済サービス等、自社のサービスとの間に相乗効果が期待されるためである。メルカリのシェア自転車サービスは、メルカリのアカウントと連動して利用されている。ヤフーの場合には、ヤフーの地図サービスをシェア自転車サービスに利用することが検討されているという。またNTTドコモは、毎月の携帯電話の料金とシェア自転車サービスの利用料金を一緒に支払うことができる仕組みを導入している。さらに中国と同様に、シェア自転車サービスで得られる顧客の行動に関する情報を、企業のマーケティングに生かすビジネスを広げていくことを検討しているという。

中国ほどのダイナミズムはないが、日本でも新しいネットサービスを、決済サービスを担う大手ネット会社が囲い込み、ビジネスの相乗効果とより付加価値の高い情報の入手を目指すといった動きは、今後広がりを見せていくのではないか。


(注1)「テンセント陣営 進む融合」、日本経済新聞、2018年4月5日
(注2)「自転車シェアは『決済ウォーズ』の前哨戦」、日本経済新聞電子版、2018年3月15日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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