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物価加速のモメンタムは見られない

2018年04月04日

4月の値上げも広がりを欠く

新年度に入ると、毎年、値上げが話題となる。今年は、人件費上昇に加えて米や大豆価格の高騰等を受けて、煎餅や納豆といった食品の値上げが目立つ。また飲料関連では、一部の国産ワインやビール、またインスタントコーヒーの値上げも伝えられている。さらに牛丼の値上げも行われる。しかし例年と比べても値上げは小粒で、広がりも欠いているように思われる。消費者物価全体に与える影響は、かなり小さいだろう。

実際の消費者物価(全国)は、変動の激しい生鮮食品を除くコア指数で2月に前年同月比+1.0%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコア指数で+0.5%である。1年前の2月に前年同月比+0.1%だったコア指数の上昇率が、1年間で+1.0%まで高まったのは、エネルギー価格上昇によるところが大きい。しかしその影響も既に一巡してきている。また、年初からの円高進行の影響が、より基調的なコアコア指数の上昇率にも悪影響を与え始めるだろう。

このように考えれば、コア指数で+1.0%の現在の消費者物価上昇率が、この先さらに改善する余地は限られるだろう。

中長期の予想物価上昇率にも変化はみられず

他方で、物価上昇率は、企業や家計の中長期の予想物価上昇率の影響も受ける。それが現在の物価上昇率を上回っていれば、先行き物価上昇率は高まると予想することが可能である。しかし企業の中長期の予想物価上昇率は、現状の物価上昇率と同水準の1%程度で安定感を強めている。

日本銀行が4月3日に公表した3月短観の企業物価見通し調査をみると、5年後の消費者物価の見通しは、平均値で前年比+1.1%と、前回調査と全く同じ水準となった。さらにこの水準は、2016年12月調査から6回連続である。

2014年3月調査の短観から開始されたこの物価見通し調査も、既に17回を数え、調査結果の信頼感もかなり高まってきた。5年後の消費者物価上昇率の見通し平均値は、調査開始当初は+1.7%であったが、その後は低下傾向を辿り、上昇傾向に転じることなく最近は+1.1%で安定している。過去6回の調査中には、景気情勢の一段の改善、円安進行、原油価格上昇などといった物価上昇には追い風も吹いたが、企業の中長期的な物価見通しは全く揺らぐことがなかったのである。

2%に向けたモメンタムとは何か

一方で日本銀行は物価について、「2%の物価安定目標に向けたモメンタムはしっかりと維持されている」との説明を繰り返している。しかしこのモメンタムという言葉が、一体何を意味しているのか、それをどのように測るのかは全く明らかでない。

需給ギャップは、2017年7-9月期に+1.35%(日本銀行推計)と、リーマンショック前の2008年1-3月期以来の高水準にある。現在の消費者物価上昇率は、需給ギャップの改善に助けられ、いわば大きなハンディを与えられた状態にある。それにも関わらず、物価上昇率は2%には程遠いのである。モメンタムがしっかりと維持されているとする根拠は希薄だ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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