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2025年の銀行の姿

2018年04月03日

変化するフィンテック企業と銀行との関係

金融分野に参入するテクノロジー企業と伝統的な金融機関との関係は、過去数年間、目まぐるしく変化してきた。フィンテックの中心地である米国を例にとれば、2015年にJPモルガンのダイモンCEOが述べて有名となった「シリコンバレーがやってくる」とのフレーズは、伝統的金融機関が、破壊者であるフィンテック企業にその業務を侵食されていくことに対する、強い危機感を端的に表していた。

他方2016年頃には、伝統的金融機関がフィンテック企業に対抗するサービスを開始し、いわば攻めの姿勢を見せ始めた。またそれと同時に、フィンテック企業との協調も強化し始めたのである。さらに2017年には、競争促進的な法整備のもとで、再び伝統的金融機関とフィンテック企業との競争関係も強まっていった。

2025年までに伝統的銀行業務はさらに大幅に縮小へ

Citiグループは、2025年までの世界の銀行の将来を展望するレポート(BANK OF THE FUTURE; The ABCs of Digital Disruption in Finance, March 2018)を公表した。そこでは、伝統的な銀行業務がテクノロジー企業にさらに代替されていく姿が示されている。

地域別に見た場合、2025年までに最も大きく縮小が見込まれるのは、中国の銀行の決済、投資業務である。それぞれ現状から50%の収入を失う見通しである。

北米地域については、決済、投資、個人向け融資、中小企業向け融資、モーゲージ(不動産担保融資)のそれぞれの業務分野で、34%の収入減少が見込まれている。他方で、最も減少率が小さいと見込まれるのが、クレジットカード融資の17%減少である。米国では、多くのフィンテック企業が設立されるばかりでなく、金融分野への参入を進めるアマゾンのような大手テクノロジー企業の出身地でもあり、競争条件は厳しい。

欧州地域では、決済、投資、中小企業向け融資の3業務分野で、34%の収入減少が見込まれている。欧州では、顧客の同意のもとでAPIの連携などを通じ、銀行が保有する顧客データに非銀行企業、いわばフィンテック企業がアクセスすることを可能とし、顧客の利便性を高める仕組みであるオープンバンキングが、EU決済サービス指令(PSD2:Payment Services Directive)のもとで、今年から義務付けられた。これも伝統的銀行とフィンテック企業との間の競争激化に繋がることが見込まれている。

長く続く銀行ビジネスモデルの変容

伝統的銀行は、新たなテクノロジーを研究、開発する「イノベーション・ラボ」を自ら設立し、またスタートアップ企業に投資し、あるいは新たにフィンテック企業を立ち上げるケースが増えている。例えばアマゾンは、銀行に口座を持っていなくても買い物の料金を決済できる仕組みとして、ネット決済専用の預金口座に似たサービスの立ち上げを検討している。そこに、JPモルガンが支援を検討している。

このような点を踏まえると、既に見たような伝統的銀行業務の縮小見通しは、かつてのようなフィンテック企業による破壊、浸食を必ずしも意味するものではないだろう。それが意味するのは、この先も長期にわたって続く、銀行ビジネスモデルの変容である。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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