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不気味なドル短期資金調達コスト上昇

2018年03月27日

Libor-OISスプレッドは2009年以来の水準に急拡大

米中間を中心に貿易政策を巡る対立のリスクが意識される中、グローバル金融市場では株式市場の不安定な動きが注目を集めている。他方、やや不可解な動きを続けているのが米国短期金融市場であり、こちらも十分注視しておきたいところだ。

ドル短期金融市場では、資金ひっ迫傾向が見られている。銀行間でのドル調達金利の代表的指標であるLibor(ロンドン銀行間取引金利)と先行きの政策金利、つまりFF(フェデラルファンズ)金利誘導目標の見通しを示すOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)との差が、急速に拡大している。昨年末には0.1%程度であった3ヵ月Libor-OISスプレッドは、足もとでは0.6%近くまで拡大しているのである。これは、欧州債務危機を受けて拡大した2011年末時点の0.5%程度を上回り、グローバル金融危機(リーマンショック)後の2009年以来の水準である。

銀行の信用不安、ドル不足の問題は見られないが

Libor-OISスプレッドは、ドルを調達する銀行の信用リスクを反映する指標として注目されるのが普通である。しかし現時点で銀行の信用リスクが顕著に高まっている兆候は、CDSなど、他の指標には表れていない。またドルの需要が強く、ドル不足が深刻な局面でLibor-OISスプレッドは拡大しやすいが、3ヵ月ドル・ユーロベーシス・スワップなどの他の指標からは、ドル不足傾向も伺うことはできない。このように、足もとでのLibor-OISスプレッドの急拡大は何を意味しているのかは良く分からず、不気味な状況である。

財務省証券発行増加の影響か

一方、Libor-OISスプレッド拡大の理由として、最も有力視されているのが、米国での年初の大型減税実施を受けた、財務省証券発行増加の影響である(注1)。米国での1年物T-Bill(短期財務省証券)は現在2.0%程度である。これは、FF金利の誘導目標レンジである1.50%~1.75%を大きく上回っている。昨年末までは、この金利はFF金利の誘導目標レンジの下限近くで推移していた。この点から、Libor-OISスプレッドの拡大は、T-Billの金利上昇に伴ってLiborが上昇した結果と見ることができる。

財務省証券発行増加による金利上昇は、その分、財政拡張的政策の景気刺激効果が削がれている(クラウディング・アウト効果)ことを意味している。また、その結果、米国での金融環境は、FF金利の誘導目標の引き上げ以上のペースで縮小していることになる。

金融政策への影響も

この傾向がさらに進めば、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めペースを緩やかにするきっかけとなる可能性も考えられるだろう。

また、米企業が資金調達先を社債発行から銀行借入にシフトさせていることが、銀行のドル資金調達コストを高める一因となっているとの指摘もある。ただし、Libor-OISスプレッドはグローバル金融危機(リーマンショック)が生じる1年以上前に俄かに拡大したという経験、つまり金融危機の先行指標となったという経験もある。

この点から、足もとでのLibor-OISスプレッドの急拡大が、先行き金融システムの安定を揺るがしかねない何らかの問題を先取りした動きであるとの可能性も否定しきれないところである。


(注1)"The Money Markets Are Messed Up", Wall Street Journal, March 26, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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