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G20で仮想通貨の国際規制が初めて議題に

2018年03月23日

「仮想通貨」ではなく「暗号資産」?

3月19・20日にアルゼンチンで開かれたG20(20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)では、事前に予想された通りではあったが、通商政策を巡る米国と他国との間の対立激化が際立ち、これが最大の議論の的となった。それに加えて、仮想通貨の規制について初めて議論された点が重要である。

G20の声明文(注1)は、仮想通貨に関する現時点での各国の認識を確認する上で興味深い。第1は、仮想通貨に関して明確にネガティブな評価を下していることだ。それは、仮想通貨(virtual-currency)あるいは暗号通貨(crypto-currency)と一般的に呼ばれているものを、敢えて暗号資産(crypto-assets)と表現していることにまず表れている。ここには、仮想通貨を通貨として認めない、との強い考えが反映されていよう。実際、声明文では、「暗号資産は、ソブリン通貨の主要な特性を欠いている」と表現されている。

さらに「暗号資産は実際、消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起する」、「暗号資産は、ある時点で金融安定に影響を及ぼす可能性がある」とその問題点が列挙されている。

ただし、「暗号資産」という表現では、あまりにも曖昧な概念となってしまうように思われる。電子媒体で記録され価値を持つものすべてを意味してしまうのではないか。

新技術に配慮

第2の注目点は、仮想通貨(暗号資産)と、仮想通貨を支える分散型台帳技術を(DLT)とを明確に区別し、後者についてはその発展を促す考えであることを確認したことである。この点は、声明文の以下の文言に示されている。「我々は、暗号資産の基礎となる技術を含む技術革新が、金融システムの効率性と包摂性及びより広く経済を改善する可能性を有していることを認識する」。

各国で仮想通貨に対する規制の障害の一つとなっていたのは、過度な規制が新たな技術革新を損ねてしまうことを当局が恐れたことがあろう。今回G20の場で、仮想通貨の問題点が明確に示されたうえで、仮想通貨(暗号資産)を支えるDLTについては、その発展を促す考えが示されたことから、今後は仮想通貨のみに焦点を当てた規制強化策が各国で実施されやすくなったのではないか。

マネーロンダリング対策が焦点に

仮想通貨の規制については、マネーロンダリング(資金洗浄)対策が最大の焦点となった模様である。G20は、仮想通貨を使ったマネーロンダリングについて、国際基準を定める金融活動作業部会(FATF)に対策強化を求めることなどで一致した。さらにマネーロンダリング対策の議論で最も重要とされたのが、仮想通貨交換所での本人確認であったという。

FATFは2015年に、仮想通貨交換所での本人確認や疑わしい取引の届け出などの義務化を促す指針を公表した。この指針を受け、日本では昨年4月に仮想通貨交換業者に登録制が導入され、口座開設時の本人確認などが義務付けられている。従って、今回のG20での仮想通貨の規制議論では、日本が批判の対象となることはなかったとみられる。

声明文では、仮想通貨の規制強化に該当する箇所では、以下のように述べられている。「暗号資産に適用される形でのFATF基準の実施にコミットし、FATFによるこれらの基準の見直しに期待し、FATFに対し世界的な実施の推進を要請する。我々は、国際基準設定主体がそれぞれのマンデートに従って、暗号資産及びそのリスクの監視を続け、多国間での必要な対応について評価することを要請する」。

ただし、FATFの影響力が直接及ぶのは、その加盟国のみであり、それは経済協力開発機構(OECD)加盟国が中心である。そのため、新興国でのマネーロンダリング対策強化に対しては、今回のG20での方針がどの程度影響力を持つのかは不確実である。


(注1)財務省「20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2018年3月19-20日 於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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