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ブレグジット後の移行期間で暫定合意もなお問題累積

2018年03月22日

ブレグジット後の移行期間で暫定合意

英国はほぼ1年後の2019年3月29日に欧州連合(EU)から離脱する(ブレグジット)が、2020年末までの1年9ヵ月を移行期間とすることで、3月19日にEU側と暫定合意に達した。英国は当初、2年間の移行期間の設定を求めていたが、EU側に譲歩した形だ。この移行期間は、英国のEU離脱に伴う環境の激変を緩和する措置であり、その合意によって無秩序な離脱(ハードブレグジット)の懸念は幾分緩和された。

EU離脱とともに英国はEUの意思決定プロセスには加わらなくなる一方、移行期間中には一定の恩恵が保持され、EU側は英国が単一市場と関税同盟の利益を受け続けることを認める。また英国にとっては、移行期間中に貿易協定をEU以外の国と交渉し、締結できるようになることが大きなメリットである。

他方で英国は、従来の主張から譲歩する形で、新たに英国に入国したEU市民に従来と同じ権利を英政府が認めることや、英国がEUの法律や規制などに原則として従うことで合意した。

この暫定合意は、英国を除くEU27ヵ国の首脳会議で、3月22・23日に承認される予定だ。

残定合意が発効するかはなお不透明

移行期間に関するこの暫定合意は、今年10月をめどに合意に向けた交渉がなされている、離脱協定に盛り込まれる。その離脱協定は、現時点では7割程度の合意にとどまっているという。この離脱協定が合意されなければ、移行期間に関する暫定合意も無効となってしまう。そのため、金融機関や企業の間ではなお合意の発効に懐疑的な見方が根強い。

離脱協定の交渉が、目処とする10月を超えて長引いたうえ、交渉が決裂してしまう場合には、2019年3月のEU離脱までに対応できる時間的余裕がなくなってしまう可能性がある。そのため、ハードブレグジットに備えた金融機関や企業の対応には、直ぐに変化が生じることにはならないだろう。

アイルランド国境問題が難問

英国のEU離脱を巡り、英国とEUとの間で最も調整が難航しているのが、アイルランド国境問題である。これが最大の障害となって離脱協定交渉が決裂し、移行期間に関する暫定合意も無効となってしまうことを懸念する向きも多い。今回の暫定合意でも、このアイルランド国境問題については先送りされた。

英国領である北アイルランドは、アイルランドと地続きである。英国がEUから離脱すれば、EUに引き続き残るアイルランドとの間で国境が復活することになる。英国とEUとの間では、税関や検問所は設けるなどの厳格な国境管理を避け、人とモノが自由に行き来できる現在の状態を維持することで大枠合意しているものの、意見の隔たりもなお大きく、具体策が議論されるに至っていない。

EUのバルニエ首席交渉官と英国のデービスEU離脱担当相はいずれも、アイルランド関連で残された課題がまだ多いと述べている。バルニエ氏はアイルランド問題を片付けなければ全体的な合意はあり得ず、すべて合意するまで何も合意していないのと同じだと述べている。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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