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G20では貿易問題と仮想通貨がテーマに

2018年03月20日

G20で米中貿易政策の対立激化も

G20、主要20か国・地域中央銀行総裁会議が、3月19・20日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる。そこで特に注目される議題となるのは、貿易問題と仮想通貨の規制の2点だ。

報道によれば、米財務省高官は、鉄鋼・アルミニウム産業への補助金など中国の不公正な政策を議題として取り上げる考えを明らかにしている。しかし、日本や欧州が米政府の求めに応じて、中国を強く批判する側に回るとは考えにくい。米政府が鉄鋼・アルミニウム輸入に関税を課す政策を発表するまでは、日本と欧州連合(EU)は、中国政府が外国企業に技術移転を事実上強要しているのは問題だとして、世界貿易機関(WTO)への共同提訴を検討していた。しかし米政府が一部の国を除いて、一律に鉄鋼・アルミニウム輸入に関税を課す方針を示して以降、日本及びEUの間では、米国との共同歩調という気運は吹き飛んでいるのではないか。

G20では、各国が米国の関税導入を強く批判し、政策の撤回を求める可能性が高い。他方で米国政府は、中国問題を取り上げることで、そうした批判をかわす狙いがあるとも指摘されている。しかしそれは、米国に対する批判をさらに増幅させ、火に油を注ぐ結果となってしまうのではないか。

仮想通貨規制で日本は存在感を示せるか?

一方、仮想通貨については、ドイツやフランスを中心にG20で規制の議論を求める動きがある。各国での法制度の違いなどから、仮想通貨に対して統一された規制の枠組みを作っていくことは難しいなか、マネーロンダリング(資金洗浄)対策、仮想通貨流出・盗難からの利用者保護の対策、などが主な論点となるのではないか。G20で仮想通貨が議題となるのは、初めてのことである。

この際、他国に先駆けて仮想通貨を法的に定義し、仮想通貨交換業者に許可制度を導入した日本の対応に各国は注目するだろう。規制を導入したものの、中国などと比べると事実上緩めの規制となっていることが、他国から日本への仮想通貨取引の移転をもたらすという、一種の規制アービトラージが生じているとの問題意識を抱いている国は、少なくないのではないか。またこの観点から、先般のコインチェックによる巨額の仮想通貨流出事件後の日本の当局の対応、今後の規制強化の考え方などについては、説明を求められるだろう。

ただし、このように日本が注目を集める一方で、国内政治情勢を受けて麻生財務大臣兼金融担当大臣がG20を欠席していることが、このテーマにおける日本の存在感、リーダーシップを損ねてしまうことになりかねないだろう。

金融市場に与える影響は?

G20が金融市場の注目を集めるのは、経済・金融危機下で先進国・新興国による協調策が期待されるような局面か、あるいは為替政策が主要議題になる場合である。しかし現状は、そのどちらにも当てはまらないことから、金融市場の関心は概して高くはないだろう。

仮想通貨については、規制強化に向けた各国の強い姿勢が確認されれば、仮想通貨の価格に下落圧力となる可能性がある。しかし、株式、債券、為替といった伝統的な金融商品に与える影響は極めて小さいだろう。

他方、貿易問題では、各国が米政府を説得することで、鉄鋼・アルミニウム輸入規制措置を大きく見直す方向に道筋を付けることができれば、金融市場はそれを大きく好感し、相応の規模でドル高・株高などが生じるだろう。しかしその可能性は低いと見られる。むしろ、貿易政策を巡って米国が孤立感を一層強めていく場合には、さらなる米国の保護主義的措置と他国との貿易摩擦が意識され、ドル安、株安などの傾向が強められる点に留意しておきたい。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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