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長期化が懸念される米国保護貿易主義

2018年03月19日

報復関税応酬のリスク

トランプ大統領は3月8日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威になっているとして、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せする、輸入制限措置の文書に署名した。3月23日に発動する。米政府は、カナダとメキシコは当面除外する一方、日本などの同盟国については、安全保障や経済面での協議次第で、除外する可能性を示唆している。

米国の輸入制限措置に対して中国と欧州連合(EU)は、報復関税の実施を示唆している。本来、中国を主な標的としているこの輸入制限措置について、中国が適用除外となる可能性はない。さらにEUも適用除外とならない場合には、米国と中国及びEUとの間で報復関税の応酬へと発展し、世界貿易の縮小につながる可能性がある。

米中間での貿易問題の高まり

さらに米政府は、2017年で3,752億ドル(およそ40兆円)と米国の貿易赤字全体の47%に及ぶ対中貿易赤字縮小のために、追加的措置の実施を検討している模様である。

ロイター通信が3月13日に報じたところでは、知的財産権の侵害を理由に、最大年600億ドルの関税を中国製品に課すことを検討しているという。米政治専門紙ポリティコによると、中国が米国に多く輸出する電子機器、通信機器、家具、玩具など100品目を超える製品に関税をかける可能性があるという。

また、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米国は中国に向けて、米国に対する貿易黒字を年1,000億ドル減らすよう圧力をかけているという。

思い起こされる世界恐慌後の経験

1920年代末に発生した世界恐慌は、主要国での関税導入を含むブロック経済化に拍車をかけ、世界貿易の縮小傾向を加速させてしまった。その反省から、第2次世界大戦後は、関税や輸出入規制など貿易上の障害を排除し、自由な国際貿易の促進を目的とする国際経済協定であるガット(GATT)体制が作られた。

各国が自由貿易のメリットを理解した上で、貿易上での紛争を一定のルールに基づいて解決していこうという考えを共有したことが、保護主義の台頭を長らく抑えてきた面があるだろう。その結果、2008年のグローバル金融危機(リーマンショック)後にも保護主義の明確な台頭はみられず、世界経済のスパイラル的な縮小は回避された。

歴史的に見ると、保護主義的な傾向は世界経済の状況が悪化している局面で高まりやすい。今回は、世界経済の状況が良好なもとで生じている点が大きな特徴である。この点を踏まえても、各国間で貿易戦争的な様相が強まり、報復関税の応酬が無秩序に続くような、ガット体制以前の状況に戻ってしまう可能性は低いだろう。

米国の保護貿易主義が長期化するリスクに注意

しかし注意しておきたいのは、景気情勢の改善が保護主義の抑制をもたらすことが期待できない分、米国での保護主義的な傾向が長期化してしまうリスクに配慮すべきであろう。トランプ政権は、今年11月の中間選挙、2020年の大統領選挙という国内政治日程を強く意識して、保護主義的な傾向をさらに強める可能性がある。また国内経済情勢が悪化しても同様であろう。

2016年の大統領選でトランプ大統領は、「米国を再び偉大に(メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン)」のスローガンを掲げた。現在は、自身が再選を目指す2020年の大統領選のスローガンを「米国を偉大なままに(キープ・アメリカ・グレイト)」とする考えを表明している。「米国第一主義」とともに、米国での保護主義政策が長期化してしまうリスクに十分配慮しなくてはならないだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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