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米政府の輸入関税導入はFRBの金融政策を慎重化させるか

2018年03月07日

輸入関税の直接的な経済、物価への影響は大きくないとの見方が多いが

米政府が現在検討している輸入鉄鋼製品に25%、輸入アルミ製品に10%の関税が課せられても、米国経済、物価に与える直接的な影響は大きくないとの見方が多い。2017年の米国の鉄鋼製品輸入額は370億ドル、アルミ製品輸入額は100億ドルだったが、その合計は輸入総額2兆3,600億ドルの2%に過ぎない。さらにこれらの輸入品が米国GDPに占める比率は0.2%程度であり、仮に関税分がすべて製品に価格転嫁されるとしても、それは物価を0.05%程度押し上げるに過ぎない。

しかし間接的な効果も含めた場合には、経済、雇用に与える悪影響には配慮すべきとの意見もある。2002年にブッシュ政権下で鉄鋼輸入に関税が課された際には、消費財産業で20万人の雇用が失われたとする研究結果もある(注1)。

FRBは米政府の輸入関税導入に否定的

ところで、米政府の輸入関税導入に関して、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官は、概して否定的である。この点から、先行きの金融政策に与える影響も注目されるところだ。

パウエル議長は先日の議会証言で、政府の輸入制限策について議員から問われた際に、それは政府が決めることとして直接的なコメントは控えたものの、「関税をかけることはベストの解決策ではない。輸入によって打撃を受けた産業を直接助ける方が良い」と答えている。

またダドリーNY連銀総裁は、「保護主義的政策は、長い目で見ればほとんど確実に、経済に悪影響を与える」と反対の姿勢を明確にしている。

FRBは様子見姿勢を強めるか

このようにFRBは、関税を通じた輸入制限に批判的と見られる。特に、各国間で報復関税の応酬となる事態に至れば、米国からの輸出にも制約となり、米国経済にも打撃となるだろう。昨年末の大型減税実施を受けて、米国経済の上振れリスクを意識したFRBは、今度はトランプ政権の保護主義的政策を受けて、先行きの景気のリスクバランスを再び下方に修正する可能性があるかもしれない。

3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げは既定路線であり、これを見送れば金融市場をかく乱させる可能性があることから、実施が見送られることはないだろう。しかしその後の政策については、米国の通商政策と他国の対応を見極めるために、しばらく様子見姿勢を強める可能性も考えられる。


(注1)"Trump steel tariffs prompt Fed anxiety", Financial Times, 5 March 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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