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黒田総裁の出口発言の意図

2018年03月02日

19年度ごろ出口を検討

黒田日銀総裁は3月2日の再任に向けた衆院議院運営委員会での所信聴取で、「19年度ごろ出口を検討し、議論していることは間違いない」と語り、金融市場を驚かせた。この発言で10年国債利回りは一時的に0.08%まで上昇、ドル円レートは105円台に突入した。

「出口戦略は時期尚早」、「出口戦略はミスリード」、「出口のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っていない」といった、今までの発言とは異なった印象を市場に与えたことは確かである。

当然のことを言っただけか

最新の展望レポートでは、2019年度ごろに消費者物価上昇率は2%程度に達するとの見通しが示されている。この見通しが実現すれば、2019年度ごろには出口戦略を検討しているのは当たり前であり、総裁発言は当然のことを言っているに過ぎない、との解釈もあろう。確かに黒田総裁も、「2019年度頃に2%の物価目標が達成する可能性が高いと確信している」との発言に続けて、この「出口を検討」との発言をしている。

しかし、従来と少しでも表現を変えれば、金融市場に様々な憶測をもたらすことは総裁、あるいは日本銀行は十分に熟知し尽くしていることを踏まえれば、この発言が不用意になされたのではなく、意図を持ってなされた可能性は否定できないだろう。実際、このような主旨の発言は、いままでなされたことはなかったのである。

正常化の地均しの初期段階か

今回の発言は、今後の具体的な出口、正常化のスケジュールは未定ながらも、物価目標の達成いかんに関わらず、次第に正常化に向かっていくという日本銀行の意図を、徐々に金融市場に織り込ませていくことを狙っているのではないか。そして、その情報発信の場として、この所信聴取を敢えて選んだのではないか。つまり所信聴取でそのような発言をすれば、それは黒田体制の2期目の政策は1期目とは異なることを示唆するメッセージとなるからである。

ただし日本銀行は、市場の期待が一方に偏り、長期金利の上昇や円高が進行する場合には、その期待を冷やすような情報発信を今までもしてきた。今回も、市場の出口観測を抑える情報発信をしばらく行う可能性は十分に考えられる。

事実上の正常化から正式な正常化へ

国債買入れ増加ペースの減額という、事実上の正常化は既に相当進んでいる。これは現場主導で進んでいるものとしても、それを容認しているという点で、黒田総裁の姿勢も既に柔軟化していると読むことができよう。

しかし正式には正常化であることを否定しながら実質的に進める事実上の正常化策には、限度がある。1期目に拡大してしまった異例の緩和策の後始末が、2期目の黒田総裁に求められる最大の課題であるが、就任直後からそれほど時間を置かない段階で、正式な正常化に向けた市場との対話を慎重に開始していく可能性も考えられよう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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