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パウエル議長初の議会証言は無難に通過

2018年02月28日

強気の景気の見方で市場の受け止め方はややタカ派

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月27日、初めての議会証言にのぞんだ。全体的には特に意外感のある見解は示されず、安全運転との印象が強い。ただし、金融市場はパウエル議長の発言を、ややタカ派と受け止め、ドル高、債券安、株安の反応を示した。

金融政策に関する、「政策金利を段階的にさらに引き上げるのが最善策だ」との発言は、1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文で示された表現を踏襲したもので、従来の姿勢を継承することを意味しているに過ぎない。

しかし、パウエル議長の発言を市場がややタカ派と受け止めたのは、主に議長の景気に関する表現であったと思われる。予想通りではあったが、2月に入ってからの株式市場の調整の影響については、「最近の急変動にもかかわらず、金融環境は緩和的だ」と発言し、先行きの景気、物価判断に影響しないとの見方を示唆した。

さらに景気については、「景気の見通しは強い」、「(経済環境は)追い風に変わった」、「今後2~3年、景気はかなり強い状態が続く」など強気の発言が目立った。また物価についても、物価上昇率が2%の目標値を下回っているのは「一時的な要因による」として、「今年は上昇し、中期的には2%前後で安定する」との見方を示した。

FOMC内のコンセンサスはなお不確実

他方、議員との間での質疑応答で目立ったのは、「自身としては」といった表現が多用されており、一部の見解は議長自身の個人的な考えであることをことさら強調した点である。これは、FOMC内で、景気、物価、政策の見通しに関してなお見解の相違が相応にあり、コンセンサスが十分に成立していないことを反映しているのではないか。例えば、先行きの物価上昇率の見通しについても、意見が分かれていることは、昨年12月分のFOMC議事要旨でも確認できる。

議会証言で示されたように、パウエル議長自身が景気、物価の見通しには強気である可能性は十分に考えられる。他方で、トランプ政権に任命されたことで、金融政策では政府に配慮してハト派のバイアスがかかりやすいとの見方をあえて払拭したいとのパウエル議長の思いが、強気の発言に繋がった可能性も考えられる。

パウエル議長が、強いリーダーシップを発揮して、FOMC内でのコンセンサス形成に強い影響力を持つことができるかどうかはなお不透明である。また現在7人のFRB本部理事のうち、4人が空席である。このうちの一席には、ハト派のカーネギーメロン大学教授のマービン・グッドフレンドが政府に指名されており、間もなく議会で承認される見通しである。残り3人の理事にもハト派が任命された場合には、政策の比重はさらにハト派へと傾くだろう。

3月のFOMCでFF(フェデラルファンズ)金利誘導目標が0.25%引き上げられることはほぼ確定と考えられるが、それ以降の政策金利の引き上げペースはなお不透明である。FRBの金融政策は、現在、金融市場が想定しているよりもややハト派方向にリスクがあると見ておきたい。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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