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仮想通貨調整下でも続くICOの活況と日本での規制議論

2018年02月28日

ICOに衰えは見られない

ビットコインなど仮想通貨の価格は、昨年末から調整局面に陥った。しかしその中でも、世界的に仮想通貨で資金を調達するICO(新規コイン公開)の勢いは落ちていない。データ会社Token Reportによると、現在までのところICOによる資金調達額は世界で16.6億ドルに達しており、これは昨年1年間の65億ドルと比べてかなり速いペースであるという(注1)。

企業側、投資家側共に多種多様

ICOについては、規制の在り方が当局の間でまちまちだ。また、トークンの対価として投資家が会社から受け取る将来の便益(新商品、新技術を買う権利など)の価値が不透明であるなか、革新的な技術といった掘り出し物に出会うことを期待してトークンを買う投資家がいる一方、仮想通貨と同様に単に値上がりのみに期待してトークンを買う投資家がいるなど、その目的もまちまちである。

ICOは起業したばかりのIT系スタートアップ企業が、短期間で巨額の資金を調達する手段として利用されるケースが多いが、それ以外もある。例えば、2018年1月9日にイーストマン・コダック社が発表した独自仮想通貨「コダックコイン(KodakCoin)」の発行のケースだ。これは、一度破産したこともある老舗企業によるICOである。このケースでは、コダック社は企業イメージのアップに加えて、株価上昇というメリットを得た。

このように、企業側、投資家側の様々な思惑と目的に支えられ、ICOのブームは続いている。

日本でも浮上する規制の議論

他方で、当局の規制も強化される方向にある。米証券取引委員会(SEC)は、既に幾つかのICOを差し止めた。米商品先物取引委員会(CFTC)は投資家に、ICOに価格操作のスキームが組み込まれている可能性があることを指摘し、その内部告発者に報奨金を与えるとした。

日本でもICOの規制に向けた動きが、出始めている。2月22日に開かれた自民党のIT戦略特命委員会とフィンテック推進議員連盟の合同会議では、複数の議員がICOの法規制が必要だと主張したという。

注目される金融庁の対応

金融庁は2017年11月に公表した金融行政方針 のなかで、ICOに言及している。「ICOで発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨などに該当すると考えられ、その実態を十分に把握していく」と、2016年の資金決済法で初めて定義された仮想通貨の一つとすることで、規制対象であることを明らかにしたうえで、「詐欺的なICOに対しては、関係省庁と連携して対応していくとともに、業界による自主的な対応の促進や利用者及び事業者に対するICOのリスクに係る注意喚起等を通じて、利用者保護を図っていく」と警戒色を滲ませた方針を示した。このように金融庁は、新たにICOを仮想通貨と定義して、資金決済法の適用対象と位置付けたものの、具体的にそれを規制する条文はない。

金融庁は、コインチェックの仮想通貨流出事件を受けて、今春にも設立が予定されている仮想通貨交換業者の自主規制団体にICOの規定を設けるように促す考えであるという。しかし、海外で生じているICOの詐欺事件が日本でも発生すれば、投資家保護の観点から法整備に踏み切ることを迫られるだろう。

(注1)"Bitcoin Dive Fails to Halt 'ICO' Boom", Wall Street Journal, February 23, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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