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日銀の外債購入は選択肢ではない

2018年02月23日

再び浮上する日本銀行の外債購入議論

日本銀行が外債を購入すべきとの議論は、過去から何度も繰り返しなされてきた。これは為替市場への影響を狙った政策手段であることから、円高が進む局面、あるいは円高進行のリスクが意識される局面で、その議論が浮上する傾向がある。足もとでも、政府関係者からそうした意見が示されている。

為替政策は、日本銀行ではなく政府(財務省)が担うということが、20年前の日本銀行法改正で明確に定められた。為替政策で政府が有する具体的な手段は、為替介入である。しかし主要国では、為替介入は他の主要国の同意のもとで、単独あるいは協調で行われることが求められている。自国の通貨を切り下げることで景気浮揚を狙う、いわゆる「近隣窮乏化政策」は決して認められないのである。特に貿易相手国を不公正だと断じるトランプ政権のもとでは、円高時にも日本が為替介入を実施できるハードルはかなり上がってしまったと言えるだろう。

日本銀行による外債購入とは、法的には為替政策を担えないはずの日本銀行が、実質的に為替市場に直接影響力を持つ政策を行うという、いわば法律の裏を突くような手段である。つまり、銀行に対する資金供給、あるいはマネタリーベースの拡大という金融調節の一環という建前のもと、実質的には為替介入に近い政策を実施しながらも、海外からの批判をかわすことを狙いとしている。

外債購入の具体的プロセス

具体的には、日本銀行が長期国債を買入れるのと同様に、入札を通じて国内金融機関から外債を買入れることになるだろう。その資金は、日本銀行が国内金融機関から外貨を買入れることで賄われる。

この一連の動きを国内金融機関全体と日本銀行のバランスシートの変化で考えると、日本銀行は金融機関から外債を買入れるが、その代金となる外貨は、国内金融機関から調達する。これは実質的に為替介入と同じである。外貨の調達で、日本銀行は資産側に外貨を持ち、負債側では金融機関の日銀当座預金に円を振り込む。さらに外債を購入した代金を調達した外貨で支払うと、日本銀行のバランスシート上では、資産側に新たに外債、負債側では同額分の日銀当座預金が増えることになる。

国内金融機関全体で見れば、日本銀行に売った外貨は、外債売却の代金で戻ってくるため、資産側で外債が減り、その分、日銀当座預金が増える。これは、日本銀行が国内長期国債を買入れて金融機関の日銀当座預金を増加させるという、通常の資金供給のオペレーションと同じことになる。

しかし通常の金融調節であるとの建前のもと、日本銀行が外貨を調達する過程で、為替市場に需給に影響を与え、為替介入と同様の効果が発揮される。

外債購入の4つの問題

しかしこの政策には大きな問題があり、実現可能とは思えない。第1に、国内国債の代わりにわざわざ外債を買入れて資金供給を行うことの必要性、妥当性を、合理的に説明することはできない。その結果、この一連の政策は実質的に為替介入であると海外からは簡単に見抜かれ、為替操作として強い批判を受けてしまうだろう。これは国際問題にも発展しうる。

第2に、日本銀行の外債購入は、政府の為替介入策と比較して、機動性を大きく欠く。入札方式で行うとすれば、事前にその予定も発表しなければならない。通常、為替介入が効果を発揮するのは、その規模というよりもタイミングである。有効なタイミングで機動的に介入を実施すれば、為替市場に影響を与えることができる。日本銀行の外債購入ではそれができないため、為替介入と比べて効果は小さくなる。

第3に、日本銀行が仮に米国財務省証券を買入れるとすると、それは米国の長期金利を押し下げることになるかもしれない。その場合、長期金利の低下で利益を受けるのは米国経済であり、米国国民となってしまう。これは、金融政策効果の海外流出とも言え、国益に資するという金融政策の本来の目的に照らして問題であろう。

第4に、その結果、日本と米国の長期金利差が縮小すると、為替市場で円高・ドル安を生じさせるかもしれない。円高阻止の目的で日本銀行が外債を購入することが、逆に円高傾向を強めてしまう可能性があり、大きな矛盾が生じてしまう。

円高が進む、あるいはそのリスクが意識される局面で繰り返し議論が蒸し返されてきた日本銀行の外債購入であるが、以上のような問題点を踏まえると、妥当な政策とは到底言えず、また実現可能性は極めて低いものと考えられる。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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