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バイトマンはECB次期総裁になるか?

2018年02月22日

ECB副総裁人事と2019年秋の総裁後任人事

2月19日に開かれたEU(欧州連合)のユーロ圏財務相会合で、今年5月末に任期を迎えるECB(欧州中央銀行)のコンスタンシオ副総裁の後任に、スペインのルイス・デギンドス経済相が内定した。3月に正式に決定される。

この人事が重要であるのは、2019年秋に任期が切れる、ドラギ総裁の後任人事に影響を与えるためである。いわゆる南欧出身者が引き続き副総裁のポストを得たことで、後任の総裁は北部欧州から選ばれるとの見方が強まっている。以前よりドイツは、次期総裁にバイトマン・ドイツ連銀(ブンデスバンク)総裁を充てるように働きかけているとされており、実際、現時点では同氏が次期総裁の最有力候補とされている。

ドイツへの権力集中を懸念

ただし、バイトマン氏が次期総裁となることが、既定路線であるとはなお言えず、むしろそれが実現すれば、異例とも言えるのではないか。ドイツ・フランクフルトにはECBの本部がある。例えばIMF(国際通貨基金)の本部はワシントンにあるが、歴代専務理事は欧州出身者のポストである。またADB(アジア開発銀行)の本部はフィリピンのマニラにあるが、歴代総裁は日本人である。このように機関の所在国とトップの出身国を分けることで、権力が一国に集中することを避ける工夫がなされている。こうした慣例に照らせば、ドイツが本部と総裁の2つを得ることは、権力集中の回避という観点からは、加盟国がすんなりと受け入られるものではないように思われる。

従って、最終的にバイトマン氏が次期総裁となるかどうかは依然として不透明だ。しかし重要なのは、それでも同氏が次期総裁の最有力候補とみなされていることである。

ドイツ脅威論は薄れたのか?

EU創立自体、欧州大陸でのドイツの権限拡大を抑え込むことがその目的の一つとされていた。金融政策において、そのドイツの権限拡大を許す議論が出てきていることは、EU、ユーロ圏、ECB創設から相応の時間が経過したことで、ドイツ脅威論が既に後退したことが、その背景として考えられる。また、英国がEU離脱を決めEUが弱体化する懸念がある中、金融政策の分野においても、ドイツにリーダーシップをより発揮して欲しいとの加盟国の思いが背景にあるのかもしれない。

バイトマンのタカ派意見が支持を集めてきているのか?

しかしこうした点以上に重要なのは、ドラギ総裁の緩和政策に一貫して反対してきたバイトマン氏を次期総裁に推す意見が、加盟国の中に相応にあるという点である。その背景には、ドラギ総裁が主導したマイナス金利政策が、金融機関の収益に打撃を与えるなど、その副作用が意識される一方、日本と同様に物価上昇率は目標値を下回っているものの、景気情勢は南欧諸国も含めてかなり良好であるなか、金融緩和の副作用に対して警鐘を鳴らし続けてきたバイトマン氏のタカ派の意見が、次第に支持を集めてきていることがあるのではないか。

その結果として、バイトマン氏が仮に次期総裁にならないとしても、今後のECBの金融政策は、想定以上のペースで正常化が進む方向にリスクがあると考えることができるように思える。

ECBは想定以上の正常化、FRBは想定以下の正常化か

他方、米国では、新任のパウエルFRB議長は、金融政策の専門性が必ずしも高くないことから、コンセンサス重視の政策運営を行うとの見方も浮上している。今後、トランプ政権が任命するハト派の理事が順次就任していけば、政策運営の重点は、現在市場が想定しているよりも金融引き締めに慎重な方向、つまりハト派に動く可能性があるだろう。

こうした点を考慮すれば、ECBは想定以上の正常化、FRBは想定以下の正常化となることで、先行きの為替市場では、ユーロ高・ドル安方向にリスクがあるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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