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正副総裁人事案の評価

2018年02月16日

正副総裁の基本的な構成は変わらず

政府は2月16日、日本銀行の正副総裁を含む国会同意人事案を、衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。そこで示された日本銀行の人事案は、黒田現総裁の続投と、雨宮現理事と早大の若田部教授を副総裁に充てるものであった。

黒田総裁の続投については、1週間ほど前に既に報じられており、予想通りである。また雨宮理事の人事案についても、概ね従来からの想定通りであり意外感はない。日本銀行の内部管理的業務を円滑に進める観点から、正副総裁のうち1人は日本銀行出身者を充てるのが慣例となっている。

おそらく最後まで政府が調整に手間取ったのが、若田部氏の人事であったと思われる。同氏は積極的な金融緩和を訴えるリフレ派を代表する一人である。同様にリフレ派である現岩田副総裁の後任という位置づけとなる。黒田総裁、日本銀行出身者の副総裁、リフレ派の学者という組み合わせは、現在と同様であり、その意味で基本的な構成は変わらない。

副総裁の金融政策への影響力は限られる

金融市場では、若田部氏が金融政策をより緩和方向へと動かすような影響力を持つと考える向きもあるかもしれないが、その可能性は低いのではないか。日本銀行法第22条第2項では、「副総裁は(中略)総裁を補佐して日本銀行の業務を掌理し。。。」とあるように、副総裁には総裁をサポートすることが強く要請されている。こうした副総裁の役割を理由に説得され、金融政策においても副総裁は総裁と対外的には意見を一致させることが常に求められる。その結果、副総裁が金融政策決定会合で議長(総裁)案に反対することはまれである。

他方、内部での金融政策に関わる議論においても、副総裁が総裁と異なる意見を強く主張し、政策に大きな影響力を行使することは困難であろう。それが可能となるのは、相当政策論に長けた大物の学者が副総裁職に就くケースに限られるのではないか。

黒田体制2期目で政策の正常化が進む

従って、今回の人事によって、現在の政策姿勢はほとんど影響を受けないだろう。しかしその結果、黒田体制下で金融政策の正常化がなされないと考えるのは誤りである。国債買入れ増加ペースの縮小など、現場主導での「事実上の正常化」は既に相当進んでおり、それを容認してきたという点から、黒田総裁の姿勢も既に柔軟化していると考えることができるだろう。

さらに金融政策運営の柱であったはずの2%の物価目標の達成には失敗していながら、それでも政府が黒田総裁を再任するのであれば、政府は2%の物価目標の早期達成を、本音のところではもはや重視していないことの表れと解釈できるのではないか。このことは、2期目の黒田体制のもとで日本銀行が、2%の物価目標の位置づけを柔軟なものへと変更し、金融政策の正常化を進めていくことをより容易にすると考えられる。

実際、年内の比較的早い時期にも、イールドカーブコントロールを見直す形で、国債買入れ増加ペースの縮小をより着実なものとし、イールドカーブのスティープ化を通じて金融機関の収益に配慮するという「事実上の正常化」をさらに進めることが見込まれる。加えて、2%の物価安定目標の位置づけを柔軟化したうえで、マイナス金利の解除など「正式な正常化」にも2019年にかけて踏み出していくことが予想される。黒田総裁再任の評価や2期目の政策見通しについては、既に発行したコラムを参照されたい(「黒田総裁の再任と2期目の責任」「2期目の黒田体制下で進む正常化」、2018年2月13日)。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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