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2期目の黒田体制下で進む正常化

2018年02月13日

2期目の黒田体制のもとで正常化は進む

広く報道されているように、黒田日本銀行総裁が再任されれば、現在の経済、金融環境のもとで、いたずらに追加緩和措置が実施される可能性はほぼ無くなったと言えるだろう。

他方、金融市場では、黒田総裁の再任によって金融政策姿勢は変わらず、正常化への道が遠のいたと考える向きもある。しかし実際には、2期目の黒田体制のもとでは、正常化策が粛々と進められていくものと筆者は考えている。

金融政策運営方針の柱であったはずの2%の物価目標の達成には完全に失敗していながら、それでも政府が黒田総裁を再任するのであれば、それは、政府が2%の物価目標の早期達成を、本音のところではもはや重視していないことの表れと解釈できるのではないか。このことは、2期目の黒田体制が、2%の物価目標の位置づけを柔軟なものへと変更し、金融政策の正常化を進めていくことをより容易にすると考えられる。

既に事実上の正常化を受け入れている

2016年9月のイールドカーブ・コントロール導入時に、国債買入れ増加ペースは、年間80兆円ペースを目途とするとされた。しかし実際には、そのペースは、足もとで50兆円前後にまで縮小してきている。これは、正式には正常化策とは説明されていないが、まぎれもなく「事実上の正常化策」である。この措置は、日本銀行の現場主導で進められている側面が強いように思われるが、黒田総裁はそれを受け入れているのである。この点から、黒田総裁の政策姿勢は既に柔軟化している。このように1期目の黒田体制の下で事実上の正常化はかなり進められてきており、2期目もその流れが続くだろう。

さらに、国債買入れ増加ペースの縮小をより着実に進めるため、市場環境次第では黒田総裁の2期目入り早々に、遅くても今年後半中にはイールドカーブ・コントロールを見直す措置が講じられると筆者は予想している。幾つかの選択肢の中で最も良いと考えられ、また有力なのは、現在の10年の0%目標を5年の0%目標に変更するといったものだ。

この措置によって、金利のコントロール力を高め、海外で金利が上昇しても、日本銀行が国債買入れ増加ペースを加速させる必要性を低下させることができる。さらに国債の5年以上のゾーンの金利上昇を許容し、イールドカーブをスティープ化させることを通じて、金融機関の収益見通しを改善させることもできる。実際、海外で長期金利が上昇するなか、イールドカーブ・コントロールが日本の長期金利の上昇を阻めば、金融機関は収益改善の機会を奪われていると、日本銀行の政策を一段と批判することになるだろう。

正式な正常化も2019年に

他方、日本銀行が長短金利の引き上げ、ETFなどリスク資産の買入れペース縮小、などの「正式な正常化策」を実施するためには、2%の物価目標を短期ではなく中長期の目標へとその位置づけを変えるなど柔軟化し、物価目標から切り離して金融政策運営をより柔軟に行うことができるような方針へと修正する必要がある。政府は本音では2%の物価目標の早期達成を必ずしも重視していないとすれば、こうした修正は政府の強い反対を招くことなく実施することが可能だろう。

今年9月に予定される自民党総裁選の前に、現政権が経済政策の実績をアピールする目的でデフレ脱却宣言を行い、それと示し合わせる形で、日本銀行が2%の物価目標の柔軟化に向けた市場との対話を始める、というシナリオも考えられるだろう。その場合には、2%の物価安定目標の柔軟化は2019年前半、短期金利引き上げなど正式な正常化策の実施は、消費税率引き上げの有無やその実施時期にも配慮しつつ、2019年後半が目途となるのではないか。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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