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オープンバンキングとフィンテック企業規制の議論

2018年02月06日

欧州でのオープンバンキング議論

オープンバンキング(OB)のあり方について、欧州の銀行界からは異論が噴出している。オープンバンキングとは、顧客の同意のもとでAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)の連携などを通じて、銀行が保有する顧客データに非銀行企業、いわばフィンテック企業がアクセスすることを可能とし、顧客の利便性を高める仕組みである。

オープンバンキングは、EUでは、EU決済サービス指令(Payment Services Directive/PSD2)のもとで、今年から義務付けられた。また英国では、CMA(公正取引委員会)が、大手9行に対してオープンバンキングへの対応を進めるよう求めている。

進む日本のオープンAPI

日本でこのオープンバンキングに対応するのは、オープンAPIであろう。2017年5月に成立し6月に公布された2017年改正銀行法では、銀行が、電子決済等代行業者と連携するオープンAPIの体制整備を進めることを努力義務としている。

ここでいうオープンAPIとは、銀行と電子決済等代行業者とが安全なデータ、アプリの連携を行い、双方の顧客に対して利便性の高いサービスを提供することである。そのもとでは、顧客がフィンテック企業に銀行口座のパスワードを提供しなくても、銀行の協力を得ることで、同様のサービスを受けることができるようになる。

この法改正では、そのような企業に対して、電子決済等代行業者として、新たに登録制を導入した。そしてこの電子決済等代行業者には、顧客情報の適切な管理や業務管理体制の整備などが求められるようになった。つまり、顧客の利便性向上の観点から、銀行、フィンテック企業共に、義務が課せられたのである。

政府は2020年6月までに、80行程度以上の銀行がオープンAPIの適用を始めることを目標にしていた。しかし実際には、銀行は前倒しでオープンAPIを適用してきており、銀行協会の調査によれば、2020年6月までに適用を始める計画の銀行は、100行を超えている。

欧州銀行はフィンテック企業の脅威を明言

他方、スペインの銀行BBVAのゴンザレス会長は、フェイスブック、アマゾン、アリババ、テンセントなどといった非金融企業が、銀行業務を侵食していくことを強く警戒している(注1)。さらに同氏は、そうした動きが金融システムの安定を損ねる可能性があることから、G20の場で、フィンテック企業への規制を議論すべきと主張している。さらに同氏は、銀行は自己資本規制など多くの規制を課されており、フィンテック企業に対して、不利な条件の下で競争を強いられていることを批判している。

さらにオランダのING銀行のハマースCEOは、EUのオープンバンキングは、フィンテック企業が金に物を言わせて銀行業務を侵食することの道を開いた、と述べている。

またクラウド・コンピューティングが広まるなかで、金融データが非金融企業に多く蓄積されるようになっていることに対しても、金融界は警戒心を抱いているようである。

日本での金融法制議論

今後は、銀行とフィンテック企業との間の「公正な競争」が、金融規制の一つのテーマとなっていくかもしれない。この点については、日本での議論が一歩進んでいるようにも見える。

金融庁が公表した平成29事務年度金融行政方針では、「金融に関する基本的概念・ルールを横断化するとともに、同一の機能・リスクには同一のルールを適用するとの考え方の下、イノベーションの促進と利用者保護のバランスを取りつつ、法体系を機能別・横断的なものにすることについて、金融審議会において検討に着手する」としている。

これは、将来的には、インターネット事業者らフィンテック企業も、金融業者と同じ法律のもとで、同じ条件のもとでサービスを提供できるようにしていくことを意図している。その結果、銀行とインターネット事業者らの連携が進みやすくなるという面に加え、両者間の競争が促されることで銀行が提供している高コストの決済、送金サービスの料金引き下げを促し、利用者の利便性を促す、という点も意図されているのである。

こうした金融庁の方針が、実際に法制化の議論へと繋がっていけば、銀行とフィンテック企業と間の公正な競争条件構築に向けた新たな規制の在り方を模索する欧州にも、大きな影響を与えることになるかもしれない。


(注1)"Top European bank chiefs want Big Tech bound by financial rules", Financial Times, February 5, 2018

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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