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大幅下落が続く仮想通貨と注目されるコインチェック事件への日本の当局の対応

2018年02月05日

ビットコインはピークから5割下落

今年1月にビットコインの価格は大幅に下落したが、2月に入っても下落傾向が続いている。コインデスク社によると、ビットコインの対ドル価格は1月に28%下落した。さらに1月末には1万ドルを割り込み、2か月ぶりの低水準をつけた。2月に入ってからも下落基調が続いており、昨年12月半ばのピークからの下落幅は、50%程度にも達している。

過去5年の間に、ビットコインの価格が月間で3割以上下落したことは3回あり、前回は2015年1月だった。しかし過去の例では、こうした調整局面は長続きせず、早期に回復基調に戻している。

足もとでの価格下落は、そもそも価値が明確ではなく、適正価格水準が不明なビットコインの価格が、昨年急激に上昇したことの反動という側面が大きいように思われる。その意味では、価格が短期間で回復する保証はないだろう。

価格下落の引き金となった5つのイベント

ただし、重なる規制強化や事件が、価格調整の引き金となり、それを増幅している面もあることも確かだ。この点から、こうした事態が続くのか、さらに拡大していくのか、あるいは一巡していくのかが、短期的な価格の方向性に影響を与える可能性は十分に考えられる。

足もとでの価格下落の引き金となったイベントの第1は、米証券取引委員会(SEC)の規制である。SECは2018年1月30日、6億ドルを調達したとされる、仮想通貨を扱い、世界初の分散型銀行と自ら称するアライズバンク社のICO(新規コイン発行)を差し止めた。SECは、同社は虚偽の情報で投資家を勧誘したとしている。これは2017年12月にSECが、レストラン評価アプリを開発したマンチーという企業のICOを認めずに、それを阻止したことに続く措置である。

第2は、今年の1月30日にフェイスブックが、仮想通貨とICOをプロモートする広告を、誤解や虚偽を助長しかねないとして、全世界で禁止すると発表したことである。

第3は、中国政府が、ビットコインのマイニング(採掘)を規制する動きを続けていることである。

第4は、韓国政府が仮想通貨取引の規制を強化していることである。今年の1月30日には、仮想通貨を売買する投資家の身元確認を強化する措置を導入した。さらに1月31日には、仮想通貨を通じて、相当額の違法為替取引が行われたことを明らかにした。

そして第5は、今年の1月26日に、仮想通貨取引所大手コインチェックが顧客から預かっている仮想通貨「NEM(ネム)」約580億円分が、不正に流出した事件である。これは、世界の仮想通貨取引所の安全性に対する信頼を損ねることとなり、仮想通貨全体の価格に悪影響を与えた。

規制アービトラージ(回避)の問題が浮き彫りに

2017年4月の資金決済法の改正によって、日本は世界に先駆けて、仮想通貨を定義し、また取引所に登録制を導入、顧客資産との分別管理を義務付けるなどの規制を導入した。

しかし、中国、米国、韓国といった、他の仮想通貨取引の中心地と比較すると、日本の規制の程度は緩い。その結果、海外での規制が強化されると、規制逃れで取引は日本に移りやすくなっている。これは一種の規制アービトラージ(回避)である。今回のコインチェックの事件の発生を受けて、海外当局者の間で、日本での規制、監督の緩さがそれに関係しているとの見方が広がり、日本の当局に対する批判が高まることも考えられよう。

金融庁の対応が仮想通貨回復の焦点に

こうした観点から、金融庁がコインチェックに対して、どの程度厳しい態度で臨むのか、あるいはそれを契機に、海外からの批判に先手を打ち、それをかわすためにも、仮想通貨取引所全体に対する規制を強化していくかのどうか、が大いに注目される。そうした動きは、規制アービトラージ(回避)の状態が続くか否か、という市場の期待にも大きく影響しよう。

この観点から、コインチェック事件を受けた日本の当局の対応こそが、ビットコインの価格が早期に回復に転じるか否かを分ける鍵となるかもしれない。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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