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銀行の手数料引き上げは、マイナス金利政策のコスト転嫁の側面も

2018年01月30日

地方銀行が相次いで手数料引き上げ

地方銀行の間で、店頭での両替や振り込みの手数料を引き上げる動きが広がっている。低金利環境の長期化で悪化を続ける収益環境の改善を図るという目的が、その背景にある。

またこれは、2016年1月に日本銀行が導入を決めたマイナス金利政策による収益悪化分を、2年近く時間が経過した後に利用者に転嫁する動き、とも解釈できるだろう。ユーロ圏地域でも、ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利政策導入して相当時間が経過した後に、銀行が預金金利のマイナス化、貸出金利の引き上げ、手数料引き上げなどを通じて、利用者にコストを転嫁する動きがみられた。

同時の手数料引き上げで利用者からの批判は緩和できるか

例えば青森銀行は2月、愛媛銀行は3月、秋田銀行と大分銀行は4月に、それぞれ振込手数料を引き上げる(注1)。青森銀の場合には、窓口で同一店内の振り込み(3万円未満)を行う際の手数料は従来の3倍の324円となる。また福井銀行は2月から、50~300枚の両替に新たに324円の手数料を課すほか、両替機の利用手数料も徴収する。山形銀行や琉球銀行は、2月から大口の硬貨を受け入れる際の料金を新設する。秋田銀行は4月から、窓口での口座振り込み、他行のキャッシュカードで秋田銀行のATM(現金自動受払機)での振り込み、小切手や為替・約束手形の発行などの手数料を引き上げる。

また大手行では、三井住友銀行が昨年5月、みずほ銀行が今月に両替手数料を引き上げており、4月には三菱東京UFJ銀行も実施する予定である。

多くの銀行がほぼ同時に手数料を引き上げることで、各行間で競争条件が維持され、また利用者から個別行への批判を軽減できる可能性がある。

大手行が新たな口座管理手数料を検討

さらに大手行の間では、預金口座の維持コストの軽減策が検討され始めている(注2)。三菱東京UFJ銀行では、低コストのネット利用を促す一方で、印紙税の負担がある紙の通帳を有料化する、「通帳発行手数料」の導入が議論され始めている。これは一種の口座管理手数料と言えるだろう。欧米では、一定金額以下の銀行預金には手数料が課せられるのが一般的である。

マイナス金利政策批判再燃も

こうした各種手数料の引き上げ及び導入は、日本銀行も歓迎するところである。中曽宏副総裁は昨年11月の講演で、「適正な対価を求めずに銀行が預金口座を維持し続けるのは困難になってきている」と指摘し、口座維持手数料を新たに預金者に求めるのも検討対象、との趣旨を述べ、「適正な対価について国民的議論が必要だ」としていた。これは日本銀行が主張してきた、収益改善を目指した銀行自らの取り組み、経営努力の一環である。そうした主張は、低金利政策が銀行収益を悪化させているとの批判に対する、日本銀行の反論(アンチテーゼ)でもあった。

しかし、このように銀行の間で手数料引き上げ、あるいは新規導入の動きが銀行の間で広まった際には、それを余儀なくしているのはマイナス金利政策であるという認識が、再び銀行利用者の間で広がる可能性があるだろう。2016年1月のマイナス金利導入後に一般国民から広まった日本銀行の政策に対する批判が、再び蒸し返される可能性も考えられるところだ。

(注1)「地銀、手数料上げ相次ぐ=低金利背景、利用者に痛手」、時事通信社、2018年1月27日
(注2)「口座維持費、悩む大手銀 三菱UFJ、通帳有料化案も」、朝日新聞社、2018年1月18日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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