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ダボス会議で俄かに浮上する米保護主義への対応

2018年01月25日

ダボス会議でトランプ大統領が演説

1月23日、スイスのダボスで世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、いわゆるダボス会議が開幕した。26日までの4日間の日程で開催される。今年の会議で最も注目されるのは、トランプ米大統領が就任後初めて会議に参加し、最終日の26日に演説を行うことだ。米大統領の参加は、2000年のビル・クリントン氏以来となる。昨年は、トランプ大統領は就任直後でそもそも会議には参加できる状況ではなかったが、その空白をつく形で中国の習近平国家主席が、米国を念頭に世界の保護主義に警鐘を鳴らす講演を行い、大いに注目を浴びた。今回は、その意趣返しをするかのように、トランプ大統領が参加する。

トランプ大統領は演説で、今年から実施される大型減税策の効果をアピールし、海外からの対米投資拡大を呼びかけると見られている。また他方で、ホワイトハウス高官は、トランプ大統領が「公正で互恵的」な通商関係を訴える見通しであることを明らかにしている。世界のビジネスリーダーが多数参加するダボス会議では、前者の法人減税は評価される可能性があり、トランプ大統領もそれを狙って、国内政治上のポイント稼ぎを目論んだのかもしれない。しかし後者の通商問題については、会議で批判を含めて大きな議論を巻き起こすことは必至であろう。

高まる米国の保護主義的傾向

ところがやや驚くことに、ダボス会議開催のまさに当日に、トランプ大統領は保護主義的な決定を行ったのである。それは、太陽光パネルと家庭用大型洗濯機について、セーフガード(緊急輸入制限)の発動を命じる文書に署名したことである。2月7日付で実施される。これは、通商法201条に基づく措置で、中国と韓国の企業が主な対象となる見込みだ。

太陽光パネルは中国企業を念頭に置いたものであり、輸入制限は4年間続く。1年目には30%の追加関税が課される。洗濯機は家電大手のサムスン電子やLG電子といった韓国企業を念頭に置いたものであり、輸入制限は3年間、1年目には輸入量が120万台を超える分に50%の追加関税が課される。

国際貿易委員会の勧告に基づくセーフガードの発動自体は、以前から予想されていたが(当コラム 「トランプ政権が通商政策で強硬姿勢を強める可能性に注意」、2018年1月24日)、大統領の署名がダボス会議開催の当日、大統領の演説の直前となったことに、政治的なメッセージが伺えよう。これは不公正な貿易に対しては、こうした強硬措置を辞さないという強い意志を、ダボス会議でアピールする意図があるのではないか。

背景には米国国内政治の問題

トランプ大統領が、ダボス会議の場で保護主義との批判を他国から受けることを覚悟で、通商政策でこうした強硬措置を見せた背景には、不安定な国内政治情勢への配慮があろう。現在の大統領に対する低い支持率、共和党を上回る民主党に対する支持率のもとでは、共和党が下院で過半数を失う可能性が半分程度あろう。そのため通商政策や外交政策でも、より国内重視、米国第一主義の内向きの政策姿勢に傾きやすい。

グローバルに経済環境が良好な中、ダボス会議の最大の焦点は、北朝鮮問題やテロ対策といった、地政学リスクへの対応であると思われた。しかしここで、保護主義への対応が俄かに大きなテーマに浮上してきた感がある。通商分野で米国とその他の国の間で軋轢が強まれば、地政学リスクへの対応での足並みの乱れに繋がってしまうことも心配されるところだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

注目ワード : トランプ大統領

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