1. HOME
  2. ナレッジ&インサイト
  3. 研究員の時事解説
  4. 木内登英のGlobal Economy & Policy I…
  5. トランプ政権が通商政策で強硬姿勢を強める可能性に注意

トランプ政権が通商政策で強硬姿勢を強める可能性に注意

2018年01月24日

トランプ政権1年目は、通商政策での強硬姿勢は懸念されたほどでなかった

1年前の2017年1月20日、米国第一主義を掲げるトランプ政権が誕生した。その際には、トランプ大統領が大統領選挙キャンペーン中の公約に沿って通商政策で強硬策を打ち出し、それが世界経済に打撃となる、あるいは為替市場でドル安、円高要因となり、日本経済や株式市場にも悪影響を与えることなどが、かなり懸念されていた。実際、大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱し、NAFTA および米韓 FTA(自由貿易協定)の再交渉を開始するなど、一部で強硬姿勢を見せた。

しかしトランプ大統領の就任1年目は、当初懸念されたほどには通商政策に関して強硬ではなかったといえる。大統領選キャンペーン時の公約に反して、大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)からは離脱せず、また幅広く関税を課さず、さらに中国を為替操作国と認定しなかった。

北朝鮮問題という外交問題が浮上したことが、中国や日本との関係を悪化させかねない通商面での強硬措置を政権が控える一因ともなった。

国内政治情勢への対応から2018年には通商政策でより強硬姿勢を示す可能性

しかし2018年には、トランプ大統領が通商政策でより強硬姿勢を示し、金融市場にも影響を与える可能性は依然として残されていよう。その背景には、米国内での政治情勢がある。ロシア疑惑などの問題を抱えるトランプ氏の政権基盤は強くなく、支持率も低迷している。現在の支持率では、今年11月の中間選挙で共和党が下院の過半数の議席を失う可能性が半分近くあるものと見られる。共和党が上院で過半数を維持できる可能性は高いが、それでもその過半数は僅差と見込まれる中、下院で過半数の議席を失ってしまえば、政策の閉塞感が一層強まろう。

こうした事態を回避するために、トランプ政権は、強硬な通商政策姿勢を見せることで、米国民からの支持を高める戦略をとる可能性がある。

中国に対しては知的財産侵害への制裁を検討

米政府は、中国に進出する米国企業が、中国側へ技術移転を強要されているとして、米通商代表部(USTR)は通商法301条に基づいて、制裁を視野に調査を進めている。政府はこの巨額の知的財産侵害に対して、罰金を検討していると説明している。また対抗措置として報復関税や輸入制限などを発動する可能性も考えられる。トランプ大統領はこの問題については、1月30日の一般教書演説で、対応策を述べると表明している。

韓国からの輸入製品に50%の関税適用、輸入数量制限を検討

トランプ米大統領は1月17日にロイター通信とのインタビューで、「韓国は、一時良い雇用を生み出した米国の産業を破壊し、洗濯機を米国にダンピングしている」とし、強力な措置を取る考えを示している。昨年11月に米国国際貿易委員会(ITC)が出した三星(サムソン)電子とLG電子の洗濯機に対するセーフガード(緊急輸入制限措置)勧告が、2月初めに実行に移されることが予想される。この勧告では、一部の輸入品に対して3年間で最大50%の関税を賦課することが示されている。

さらに韓国に対して米通商法232条の適用を主張する声も政権内で高まっている。この条項は、国家安保に脅威を与え得る輸入活動に対して輸入量の制限などの措置を講じるものであり、適用されれば、米国にアルミニウムや鉄鋼製品を輸出する韓国に大きな打撃となることは必至だ。

また農水産物の追加開放、自動車関税の引き上げなどを争点に、韓米自由貿易協定(FTA)改正交渉も昨年開始されており、現在も議論が続けられている。

日米自由貿易協定(FTA)に意欲

日本については、政権は対日貿易赤字の削減を主張し、昨年11月の日米首脳会談では、米国製防衛装備品の購入を増やすように日本政府に迫った。

また貿易赤字削減へ2国間交渉を重視するトランプ政権は、日米自由貿易協定(FTA)に意欲を示している。昨年、両国は日米経済対話の枠組みを創設したが、インフラなどでの協力を前面に出したい日本と、対日貿易赤字削減を最優先に考える米政権との思惑はずれたままである。ハガティ駐日大使は、日米自由貿易協定(FTA)を巡って、今年春にも、進展が見られるだろうと述べている。日本との間の貿易不均衡の是正を目指し、貿易協定の締結に向けた枠組みづくりを進めたい、という考えを米国側は示しているのである。

NAFTA脱退の可能性

通商政策の面から、目先の最大の注目は、カナダのモントリオールで1月23日に開かれ29日まで続く、第6回NAFTA再交渉であろう。トランプ大統領は、NAFTA再交渉の最善の結果は協定の廃止だとの考えを示しており、また米国の要求が聞き入れられなければNAFTAを脱退すると言明している。そのため、この第6回会合は、NAFTAの先行きを左右する極めて重要な会合と考えられている。11月の米中間選挙を控え、米国第一主義のトランプ大統領がNAFTA離脱を表明する可能性は、依然として大きく残されていよう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

注目ワード : トランプ大統領

このページを見た人はこんなページも見ています