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米政府機関閉鎖も経済への打撃は限定的か

2018年01月22日

2013年10月以来の米政府機関閉鎖

トランプ米大統領就任からちょうど1年目となる、先週末の1月20日(土)に、米国では政府機関が一部閉鎖される事態となり、大統領の指導力が問われている。また、好調な米国経済に水を差すことも一部で懸念されている。米国での政府機関閉鎖は、2013年10月以来のことである。

政府機関閉鎖を引き起こしたのは、上院で暫定(つなぎ)予算案が否決されたことによる。週末はもともと多くの政府機関は閉鎖されているため大きな問題はなかったが、週明け以降も暫定予算が成立しなければ、政府機関の活動の一部は滞り、職員は自宅待機を強いられる。

米政府は行政サービスの休止を最小限にとどめたい考えであり、国家の安全や人命に直接影響する業務は続けられる。例えば、米軍は国内外で任務を継続し、航空管制システムや連邦刑務所、郵便局などは通常通り業務を続ける見込みだ。しかし、国務省のパスポート発給業務や米疾病対策センターのインフルエンザ感染監視業務などが滞る可能性があると米メディアは報じている。

ドリーマーの救済措置が争点に

政府機関閉鎖のきっかけとなった暫定予算案を上院で可決させるには、過半数の議席を占める共和党内部でも守強硬派グループ「自由議員連盟(フリーダム・コーカス)」の支持を取り付けることに加え、上院で民主党のフィリバスター(議事妨害)を阻止するため少なくとも9人の上院民主党議員の支持を取り付ける必要がある。しかし民主党は、政府閉鎖に追い込むことがトランプ大統領と共和党に打撃になるとの政治的戦略から、暫定予算案に反対の立場を続けた。19日の暫定予算採決の投票では、民主党から保守派5人が賛成に回った一方、共和党も実質4人が反対した。

少なくとも表面的には両党間で大きな争点となっているのが、子供の時に親とともに不法入国した若者、いわゆるドリーマーの救済策である。ドリーマーに対する強制送還猶予の期限が3月第1週に迫っており、これに対処しなければ、彼らに対する就労許可証は発給されなくなる。民主党は強制送還猶予(DACA)の存続を求めているのに対して、共和党がそれを拒否している。

2013年政府機関閉鎖は16日間、経済損失は240億ドル

米政府機関閉鎖は、近年では1995~96年、2013年に生じている。クリントン政権期の1995~96年には、政府機関の閉鎖は27日間に及んだ。また、オバマ政権期の2013年には、16日間の政府機関閉鎖が生じた。S&P社は、この時の政府機関閉鎖によって生じた経済的損失は、240億ドルと試算した。

今回も、政府閉鎖期間が長期化するほど、米国経済に悪影響が及ぶことになる。S&P社は昨年、政府閉鎖が1週間続くたびに、GDPは65億ドル、GDP成長率は0.2%押し下げられると試算していた(注1)。

実体経済への悪影響は限定的か

米国金融市場は、政府機関閉鎖をいつもの政治ショーと、現状では比較的静観しているように見える。もちろん、閉鎖が長期化すれば金融市場も徐々に警戒感を強めていくことになろう。

ただし、政府機関閉鎖が長期化すれば指導力不足とトランプ大統領の支持率の一段の低下に繋がり、11月の中間選挙の見通しをより厳しくしよう。他方で、国民の批判の矛先が次第に民主党に向かうことも考えられる。こうした政治力学が働くことで、暫定予算の可決について両党間の妥協が早晩成立することが見込まれる。しばらく極めて短期の暫定予算を繰り返す可能性はあろうが、閉鎖期間の合計が、過去の政府機関閉鎖時よりも著しく長期化するような事態となる可能性は、限られるのではないか。

また、政府機関閉鎖が長期化すれば米国経済に悪影響が及ぶが、現在の経済の堅調さを崩すことにはならないだろう。さらに最終的に成立する暫定予算案が、現在の民主党案に近いものとなった場合には、軍事費も含めて向こう2年間、裁量的支出がかなりの増額となる。政府機関閉鎖後には、財政刺激効果が相応に期待できるのである。


(注1)https://www.spglobal.com/our-insights/With-A-US-Government-Shutdown-There-Will-Be-Blood.html

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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