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金融政策正常化が2018年金融市場のテーマに

2018年01月16日

日本銀行の正常化観測が市場を揺り動かした

2018年のグローバル金融市場に大きな影響を与えるのは、金融政策の正常化、とりわけ日本銀行の政策正常化である、と昨年来考えてきたが、過去1週間の市場の動きをみると、まさにそのような様相を呈している。

1月9日の金融調節で、日本銀行が超長期ゾーンの国債買入れ額の減額を決めたことから、金融市場では日本銀行が近い将来、正常化策を実施するとの観測が浮上した(本コラム「超長期オペ減額で進む事実上の金融政策の正常化」、2018年1月9日)。

国債買入れペースの縮小自体は、2016年9月のイールドカーブ・コントロール以降着実に進められてきていたが、①金利情勢が落ち着いているもとで減額措置が決定されたことから、減額の意図がより明確になった、との観測が広がった、②超長期ゾーンでの国債買入れ額の減額の決定が、金融機関の収益に配慮して日本銀行が超長期金利の上昇を通じたイールドカーブのスティープ化を実施するという、昨年来金融市場に浮上していた観測を一層強めた、ことが、この措置が金融市場で大いに注目された背景であった。

日本の正常化観測がグローバル市場に影響

10年債利回りを0%程度に誘導するイールドカーブ・コントロールが実施されている日本では、当日の10年債利回りの上昇幅は限られ、2~3bp程度と小幅であったが、その影響を受けて米国の10年債利回りはその何倍もの上昇幅となり、日本での金融政策正常化がグローバル金融市場に与える影響の大きさを、改めて確認させるものとなった。

また1月11日に公表された欧州中央銀行(ECB)議事録(2017年12月14日開催分)では「金融政策スタンス、フォワードガイダンスに関する文言を2018年初めに再検討する可能性がある」との記述が見られたことから、ECBの金融政策正常化が従来予想よりも早まるとの観測が浮上し、これもグローバルな長期金利上昇を促す一因となった。

2018年前半にも金利目標短期化など事実上の正常化策の進展

日本銀行が国債買入れ増加ペースの縮小を、意図を持って進めていることは明確であると筆者は考えている。さらに、①国債買入れ増加ペースの縮小を着実なものにし、国債買入れの限界や流動性の極度の低下を回避する目的、②長期・超長期の金利上昇を伴うイールドカーブのスティープ化を通じて、金融機関の収益環境に配慮する(姿勢を見せる)目的、から、金利目標を10年から5年に短期化するなど、イールドカーブ・コントロールの修正を通じて2018年前半にもさらなる事実上の正常化が進められるものと筆者は考えている。

市場、金融機関の反応を見ながら正常化は慎重に進められる

こうした正常化の障害になるのは、金融市場の反応であろう。日本銀行が国債買入れのさらなる減額を意図しているとの観測が市場に浮上すれば、それは10年債金利の上昇を促すことになる。その際、10年金利を0%程度に維持するためには、国債買入れペースを再び拡大させる必要があり、減額の方針が水を差されてしまう。また、国債買入れのさらなる減額や長期・超長期金利の上昇を日本銀行が志向しているとの見方が広がれば、それは今回のように円高傾向を招来し、それも正常化を妨げることになろう。

さらに日本銀行は、イールドカーブ・コントロールを修正する形で長期・超長期の金利上昇を促し、金融機関の収益を改善させる、事実上の正常化を進めると予想されるものの、それは銀行自ら身を切る構造改革とのセットでなされるべき、と日本銀行が考えている可能性がある。そうだとすれば、安易な銀行救済と受け止められ、そうした取り組みに水を差すことがないよう、事実上の正常化を進める際には、かなり慎重な情報発信を行っていくだろう。

主要国の同時の正常化で自国通貨高リスクは軽減される

このように、日本銀行の事実上の正常化の進展は、かなり慎重に進められることが予想される。正常化に関する金融市場の観測が、先走りと修正を繰り返しながら、緩やかに、それでも着実に、事実上の正常化に向けて日本銀行の政策と市場の観測とは平仄を合わせて進んでいくことになるだろう。

ただし、円高リスクについては、他国、例えば米欧で正常化に向けた動きが強まる、あるいはそういう期待が市場で強まる局面では、日本銀行が正常化に向けた動きをより明らかにしても、円高のリスクは高まらない可能性がある。つまり主要国が同時に正常化の動きを強めれば、いずれの国も自国通貨高のリスクを軽減することができるのである。

この点を踏まえれば、主要国で同時に正常化に向けた動きが俄かに強まり、事態が思いのほか速く進展するリスクにもまた配慮しておきたいところだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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