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超長期オペ減額で進む事実上の金融政策の正常化

2018年01月09日

1年振りの超長期国債買入れ減額

1月9日の金融調節で、日本銀行は超長期ゾーンの国債買入れ額の減額を決めた。長期、超長期の金利が安定している状況下での減額決定は、金融市場では驚きを持って受け止められ、先行き金融政策の正常化が進むのではとの観測から円高が進んだ。

減額を決めたのは残存期間10年超25年以下と残存期間25年超の超長期ゾーンであり、買入れ額はそれぞれ1,900億円、800億円と前回から100億円ずつの減額となった。減額は、前者が2016年12月28日以来、後者は2017年11月24日以来のことである。

長期国債買入れ増加額ペースのさらなる縮小が目的か

イールドカーブ・コントロールのもとで、日本銀行は0%程度である10年金利の目標達成を目指している。実際には、0%を中心に上下0.1%を変動レンジとして許容するオペレーションを行っているとみられる。

通常は10年の金利が上振れ、この変動レンジを上に抜ける可能性が生じた際には、10年国債の買入れを増額し、逆に10年の金利が下振れ、この変動レンジを下に抜ける可能性が生じた際には、10年国債の買入れを減額することで対応する。

さらに、目標とする10年よりも短い、あるいは長い金利が上下に振れることでその影響が10年金利にいずれ波及し、10年金利の目標達成を困難にする見通しが生じた際には、10年よりも短いゾーン、あるいは長いゾーンの国債買入れ額を調整するのである。

今回は、このように10年金利あるいはそれ以外のゾーンの金利に大きな変化が生じておらず、10年金利目標の達成に障害が生じる見通しがない中で、超長期ゾーンの国債買入れ額の減額を決めたという点が重要なのである。それは、減額の目的が、①長期国債買入れ増加額のペースを縮小することで、国債市場の過度の流動性低下を回避する、②長期・超長期の緩やかな金利上昇を通じて、金融機関の収益環境を改善させ、金融仲介機能の低下を回避する、という正常化策の一環であることを示唆しているのではないか。

イールドカーブ・コントロールのもとで買入れ増加ペースは着実に減少

実際、2016年9月以降、日本銀行の長期国債の買入れ増加ペースは着実に減少している。日本銀行の長期国債保有残高は、当初は前年比で80兆円程度増加していたが、2017年12月時点で長期国債保有額は58兆円まで縮小している(図表)。瞬間風速でみれば、50兆円程度まで縮小していよう。長期国債の買入れ増加ペースは金利コントロールの結果として決まるものであり、そこに政策的な意図はない、というのが日本銀行の公式見解だが、これほど着実な買入れ増加ペースの縮小が、自然に実現されたものとは考え難いところである。

2016年9月にイールドカーブ・コントロールが導入された時点で、長期国債買入れ増加額は、政策の操作目標ではなくなった。これによって、長期国債買入れ増加額は、政策委員会ではなく現場のオペレーションで決まるような体制となったのである。また、長期国債買入れ増加額のペース縮小という事実上の正常化策が、現場主導、職員主導で進められる体制が整えられたことを意味しているのではないか。


現場主導での事実上の正常化がさらに進む

こうした体制の下、イールドカーブ・コントロールを修正する形で、①さらなる長期国債買入れ増加額のペース縮小と、②長期・超長期の金利上昇によるイールドカーブのスティープ化、という事実上の正常化策が、今後も進められていくだろう。金融市場では、金融機関の収益に配慮して、日本銀行が長期・超長期の金利上昇を伴うイールドカーブのスティープ化を促すとの観測が、昨年から浮上していた。今回のオペの減額の対象がまさにそのゾーンであったことが、市場の正常化期待を一段と強める結果となったと思われる。

オペ減額を受けて、為替市場では一時的に50銭程度の円高・ドル安が生じた。日本銀行が事実上の正常化を進める中では、債券市場に為替市場は過敏に反応する可能性があり、その結果、円高の進行が正常化の妨げになる可能性がある点を裏付けた動きとして注目しておきたい。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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