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MiFIDⅡ(第2次金融商品市場指令)がスタート

2018年01月05日

1月3日にMiFIDⅡ(第2次金融商品市場指令)がスタート

1月3日に、欧州でMiFIDⅡ(第2次金融商品市場指令)が施行された。日本では、「資産運用会社に対して、投資銀行に支払う取引執行費用とリサーチ費用を分離して、顧客への透明性を高めることが義務付けられる」という規定に関心が集中している感がある。しかしMiFIDⅡは、2008年のグローバル金融危機を受けた欧州型の危機対応を示すものであり、極めて包括的で大規模な金融規制の体系である。

2007年に施行されたMiFID(金融商品市場指令)は、EU(欧州連合)の資本市場、とりわけ株式市場の競争を促進することに重点が置かれていた。しかし、グローバル金融危機によって明らかになったのは、株式以外の金融商品に対する規制の弱さや、競争激化が取引を複雑化させ取引の透明性を損ねた、などといった規制上の弱点であった。これを受けて、①取引の透明性強化、②投資家保護、の2点を強化した形で、MiFIDⅡが策定されたのである。

その内容の複雑さから、施行は当初の予定から1年遅れとなった。ただし、現時点でMiFIDⅡを国内で完全に法制化できたのは、EU加盟28ヵ国中11か国と、半数以下にとどまっている。

MiFIDⅡは金融機関に大きな負担

MiFIDⅡの主な内容には、①金融取引の透明性を高めるためにリアルタイムでの取引価格を公表すること、②現地の規制当局に対して取引終了後に報告すること、③金利スワップ、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などは、規制された取引プラットフォームでのみ取引できること、④取引記録を5-7年間にわたって保存すること、⑤投資家保護の観点から最良執行のために必要な手順を踏むこと、⑥フロントオフィスにおいて違反の可能性がある行為の監視を強化すること、⑦取引執行費用とリサーチ費用を分離すること、などがある。

こうした新たな規制は、金融機関に多額の投資を強いるものとなっている。調査会社エクスパンドによると(注1)、世界最大手クラスの銀行と資産運用会社が2017年に投じた資金は、21億ドルに上ったと推定されている。

2017年末に特に懸念されていたのは、当局への取引報告システムが問題なく作動するかという点であった。欧州の銀行、証券、運用会社は、クリスマス休暇を返上して、最後のシステムチェックを行ったという。

初日に大きな混乱はなかったが

MiFIDⅡが適用された初日、1月3日の欧州市場では、システム障害などの大きな混乱は見られなかった。欧州証券市場監督機構(ESMA)のマイヨール長官も、これまでのところ技術的な問題は生じていないと語っている。しかし、市場参加者の慎重な姿勢を反映して、株式の出来高は少ない薄商いとなった。

またシステム対応が間に合わなかった金融機関では、MiFIDⅡ施行後も、一部手作業で取引情報を入力している模様であり、今後入力ミスが発生する可能性も無視できない。

MiFIDⅡは7年間の準備期間をかけて施行された。その間に諸環境も変化していることから、早晩その改訂版であるMiFIDⅢの策定が必要になるとの見方も多い。そうした観測を背景に、MiFIDⅡへの完全な適用に距離を置いている機関もあるだろう。またEU加盟28ヵ国中17か国ではMiFIDⅡが国内でなお法制化されていない背景には、同様の思惑もあるのかもしれない。MiFIDⅡは施行されたものの、依然として具体的な措置については不透明な部分が多くあり、今後は市場参加者と当局との間のやり取りを経て、やや場当たり的に決まっていく側面も多いようにも見受けられる。それが法制度の信頼性を損ねることもあるかもしれない。

このように初日こそ大きな混乱は見られなかったとはいえ、MiFIDⅡの具体的な適用や将来の修正に関する不確実性は引き続き高い状況であり、これが市場取引の抑制に繋がるなどといった弊害を生じさせる可能性は残されていよう。


(注1)「焦点:欧州第2次金融商品指令、満を持して来年初めに始動」、ロイター通信ニュース、2017年12月27日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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