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波乱のビットコイン市場の年末風景

2017年12月27日

6日連続での下落は回避

先週、大幅下落を見せたビットコインの価格は、今週に入ってからも下落を続け、月曜日で5日連続での下落となった。5日連続での下落は今年7月と9月以来のことである。その際には6日目に価格は上昇に転じたが、今回も6日目である火曜日に上昇に転じた。NY時間の月曜日夕刻から火曜日の早朝までに、ビットコインは10%程度の反発を見せた。先週の最安値から計算すれば、30%程度の大幅上昇である。

CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)とCBoe(シカゴ・オプション取引所)のビットコイン先物市場でも価格は上昇しており、とりあえず大幅調整のリスクは幾分和らいでいる。先週来の下落幅は、2015年以来となる4割以上にも及んだが、それでも最安値の水準は12月初めの水準に戻ったに過ぎない。

ホリデーシーズン入りが価格下落の主因?

今回の価格調整の背景には、それ以前の急騰の反動との見方が有力であるが、それがこのタイミングで生じた理由としては、2万ドルの大台を超えられなかったという心理的な影響に加えて、欧米でのホリデーシーズンが影響していることを挙げる向きもある。すなわち、休暇前に急騰後の利益を確定しておく行動が揃って起きたことが、突然の価格大幅下落の背景にあったという指摘である。それを裏付ける証拠として、通貨別取引ではドルの比率が高まり、円の比率が低下したことが挙げられている。

しかしこれは、休日もなく24時間トレードをしているビットコインの個人トレーダーのイメージとは異なっている。果たして伝統的な金融商品への投資のように、休暇前に利益を確定するようなポジション調整が幅広く行われるだろうか。

他方で、12月18日にCMEの先物取引が開始された18時間後に、ビットコインは史上最高値に達し、その後に大幅に下落したことから、先物取引の開始が先物での売り圧力を高めて直物市場での価格下落につながったとの見方には、一定の説得力があろう。

信託が仮想通貨を保全

ビットコインが下げ止まるきっかけの一つとなったとみられるのが、三菱UFJ信託銀行が仮想通貨を信託の対象とし、取引所の破綻や犯罪から委託者の保有する仮想通貨を守るという世界初の信託を開発し、特許を申請したという報道である。金融庁の認可を受けて、来年4月にもサービスを始める見通しであるという。既に取引所には、取引所自身の勘定と顧客の勘定とを明確に分ける、分別管理が義務付けられているが、それでも不正などによって顧客が仮想通貨を失ってしまうリスクは回避できない。ビットコインの取引量が現在世界一である日本において、従来の法整備の進展に加えて、このような資産保全の仕組みが整えられていくことは、ビットコイン取引に対する信頼性を高め、価格が下げ止まる一つのきっかけとなった可能性は考えられるだろう。

引き続きビットコイン市場と伝統的市場とは連動が薄い

ところで今回のビットコイン市場の急落劇で注目しておきたいのは、それが株式市場など他の伝統的な市場に目立った影響を与えなかったことである。ビットコインの価格下落によって、市場全体にリスク回避の傾向が強まれば、国債が買われ、国債利回りが低下したはずである。一方、ビットコインの価格下落による損失を、株式売却による益出しで埋めるような動きが広がれば、株価が調整したはずである。実際には、このどちらも顕著には見られなかったのである。

この点は、ビットコインの投資家と伝統的な金融資産への投資家との間には、依然としてそのプロフィールに大きな乖離があり、またビットコインの資産規模が依然として小さいということを表していよう。ビットコインは依然として異質な市場であることを改めて認識させられた、年末の急落劇であった。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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