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年末にかけて深刻化するドル不足とドル調達コスト急騰

2017年12月22日

ユーロで顕著な年末のドル調達コスト上昇

年末が近づく中、日本及び欧州の市場で、ドルの調達コストが予想外の上昇を見せている。日本の投資家が円を担保にドルを調達する際の金利上乗せ幅を示す「ベーシススワップ」のマイナス幅は先週75ベーシス程度と、昨年末以来の水準に達した。

それ以上にドルの調達コスト上昇が顕著であったのが欧州である。ユーロ圏の投資家がドルを調達する際の「ベーシススワップ」のマイナス幅は、先週1%を超え、6年ぶりの水準となった。つまり、2011年のギリシャ危機時並みの状況となっているのである。

影響はドイツ国債にも及ぶ

これは、反対に米国の投資家が非常に低いコスト(マイナス)でユーロを調達できることを意味している。彼らはそうして調達した資金で、マイナス金利のドイツの短期国債を購入し、十分に利鞘を稼ぐことができる。そうした裁定取引の結果、今週初めにドイツの1年物国債の利回りは、-1.7%と歴史的な低水準に達したのである。

年末のドル調達コスト上昇は規制の影響

年末にドルの調達コストが上昇するのは例年のことである。これは主に規制の影響であり、規制で求められるG-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の資本の上乗せ規模や翌年の課税額などは、年末時点のバランシートの規模で決まる。そのため、年末には米銀行がバランスシートの拡大に繋がるドル融資に慎重となり、むしろドルの融資を絞るようになる。しかし欧州でのドル調達コストの上昇は、それだけでは説明できない。背景に幾つかの要因が指摘されている。

それ以外の3つの要因

第1は、米国債や米株の需要が強い中、ドルがそうした資産にロックインされて、キャッシュとして供給されないため、ドルキャッシュの需給がひっ迫している。

第2は、欧州で2018年から始まる新たな金融規制である第2次金融商品市場指令(MiFID2)を前に、不確実性への対応という観点も含めて、ドル保有を積み上げる動きがある。

第3は、国内での貸出業務の採算が悪化する中、邦銀がより利鞘を確保できる外貨建てローンを拡大させており、そのためのドル調達需要が高まっている。

年明け後のドル調達コストに注目

年末にかけてのドル調達コストの予想以上の上昇が、従来通りに主に規制の影響によるのであれば、年初にはその影響は剥落し、市場は正常化する。しかし、年明け後もドル調達コストが十分に低下しない場合には、規制による季節的な影響を超えて、恒常的な要因が働いていることが明らかになろう。そうなれば、ドル不足問題も恒常化していくのである。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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