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ビットコイン先物取引の課題

2017年12月21日

CMEでもビットコイン先物取引が始まる

シカゴ・オプション取引所(CBOE)に続いて、世界最大のデリバティブ(金融派生商品)取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも12月19日、仮想通貨ビットコイン先物の取引が始まった。初日の取引は比較的低調であったとの評価が多い。期近の1月限の総出来高は8,000億ドル超だったが、これは、香港を拠点とするビットコイン先物専門の取引所ビットMEXの1日当たりの出来高が40億ドル程度に達しているのと対照的であるという(注1)。CMEについても同様であるが、大手の取引所という信頼感が多くの投資資金を流入させるといった事態は、少なくとも取引開始の初期には生じていない。

大手ビットコイン先物取引所の使い勝手の悪さ

既存のビットコイン先物取引所と比較した場合、大手取引所で始まった先物取引が、仮想通貨のトレーダーにとって使い勝手が良くない理由は主に4点ある。第1は、取引業者に担保として差し入れる証拠金の取引額に占める比率は、CMEの場合には47%とかなり高い(CMEの原油先物では約4%)。第2に、その証拠金はビットコインではなくドルで差し入れることが求められている。第3に、先物取引の決済が2営業日後になる。第4に、週末と休日(バンクホリデー)には利用できない。

スポット価格と先物価格の差が大きい

CBOEと比較した場合、CMEの方が、スポット(直物)価格と先物価格との差が小さい傾向がある。これは双方の市場間で裁定取引が、相対的に活発に行われていることを意味しよう。これは、CMEの方がより大きな規模の取引を行うトレーダー、例えばヘッジファンド、大手金融機関の比率が高いためであるとの見方がある。

CMEでは取引開始から2時間程度は価格差が1,200ドル程度開いていたが、その後は400ドル程度まで縮小したという。これは比率でみれば2%程度である。CBOEでは、取引初日の終値での先物価格とスポット価格(コインデスク調べ)の差は、約7%であったという 。しかし、それでも他の商品での直先価格差と比べればかなり高く、スポット市場と先物市場との間に十分な裁定が働いていない可能性を示唆している。

清算価格の不透明性が障害に

ヘッジ機能としてビットコイン先物市場が利用されることの障害となっているのが、清算価格の不透明性であろう。清算時点での清算価格として、CBOEはジェミニ取引所という一つの取引所のスポット価格を適用する一方、CMEは4つの取引所でのスポット価格の平均を適用する。

しかし取引所ごとにスポット価格に大きな乖離があり、スポット市場で一物一価が成立していない状況のもとでは、先物取引を用いたヘッジ機能も十分に働かないといえる。

大手銀行・証券が清算業務への参入を見送り

先物取引が広がらないその他の背景として、清算機関である大手銀行、証券会社が、ビットコインの高いボラティリティや決済リスクを理由に、マーケットメイクを行う清算業務への参入を見送っていることもある 。そうした機関には、JPモルガン・チェース、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ、ソシエテ・ジェネラル、UBSなどが含まれている。これらはCMEでもCBOEでの同様の戦略をとっており、しばらくは様子を伺う姿勢である。他方、ゴールドマン・サックスとABNアムロはCME、CBOEの双方で清算業務を行っているが、ごく限られた小数の顧客向けであるという。

このように、ビットコインのボラティリティの激しさなどが、トレーダーあるいは清算機関の先物市場への参入を制約しているのが現状であろう。先物市場がヘッジ機能を十分に果たし、先物市場とスポット市場でのビットコインの取引が相乗的に高まる局面に至るまでには、なお時間を要しよう。


(注1)「CMEビットコイン先物は低調な滑り出し、使い勝手悪いとの声も」、ロイター通信ニュース、2017年12月19日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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