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成長と規制のせめぎ合いが続くICO(新規公開コイン)市場

2017年12月19日

ICOを通じた資金調達額は400億ドル超

ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、世界の「ICO: Initial Coin Offering(新規コイン公開)」を通じた資金調達額は、400億ドルという節目を超えたという(注1)。

今年9月には、ICOがしばしば詐欺などの犯罪に用いられてきたことから、中国政府がそれを違法行為であるとして、個人や団体に禁止令を出した。その後、韓国の金融当局も、投機的な取引や詐欺行為によって投資家が損害を被る可能性に配慮して、ICOを全面的に禁止することを決めた。しかしながら、それでも世界でICOを通じた資金調達は明確に衰えることはなかった。

SECがICO阻止に動いた

一方で、ICOを警戒する規制当局の動きも、足もとで一段と明確になっている。米証券取引委員会(SEC)は12月11日、レストラン評価アプリを開発したマンチーという企業のICOを認めずに、それを阻止した。理由は、有価証券登録義務違反であるという。SECは2017年7月に、ICOでトークンの販売には連邦証券法が適用されることを確認している。そのため、ICOではトークンをSECに有価証券として登録する義務が発生したが、マンチーはその登録をしなかったと説明されている。これは、ICOに犯罪の疑いはなくても、連邦証券法に従わない場合にはSECが阻止に動くという前例を作る意図があったとみられる。

英国FCAも警戒色を強める

さらに英国のFCA(Financial Conduct Authority: 金融行為監視機構)は、投資家・消費者保護の観点から、かなり厳しいトーンでICOについて注意喚起を行ってきた。2017年9月12日に発表した"Consumer warning about the risks of Initial Coin Offerings"と題するレポートでは、将来のサービスを受け取る前払いのバウチャーとも言えるトークンは、しばしば全く実質的な価値がないとし、さらにICOは非常にリスクが高く、投機であると断じていた。そして投資家に対して、リスクを十分に認識したうえで、トークンの価値を決める発行企業の業務計画について、十分なリサーチを行う必要があるとしていた。

その英国FCAが、2017年12月15日にはICOについて、「急速に発展する市場の情報を集め、より深く調査する」、「規制的な取り組みが必要かどうか決める材料になるだろう」との説明をした(注2)。これは、投資家保護の観点から注意を呼び掛ける段階から、新たに規制を導入することを検討するという新たな段階に入ってきたことを意味しよう。

SECは仮想通貨全体を規制する可能性を示唆

既に述べたように、SECはICOの阻止に動くという事例を作ったが、それを発表してから僅か数時間の後に、SECのクレイトン委員長は、仮想通貨とICO市場は、通常の有価証券市場に比べて投資家を保護する仕組みが極めて少なく、詐欺や不正操作のリスクが極めて高いことを指摘した。また同氏は、仮想通貨を取引する多くのプラットフォームは、取引所あるいは代替的な取引プラットフォームとしての登録を義務付ける法律に違反している可能性がある、と指摘した(注3)。

こうした発言は、ICOのみならず仮想通貨全体についても、米国当局はそれらを有価証券と明確に位置付けたうえで、その発行に関わる登録義務、取引所の登録義務などを厳格に適応していく考えを、より明確にしたものと考えられる。

健全な成長を促す規制となるか

英米でのこうした動きは、ICOあるいは仮想通貨の成長を抑えることが目的ではなく、その健全な成長を促すために、どのような規制が適切であるかを真剣に考え始めたことを意味していよう。

日本では、2017年4月の資金決済法改正によって、仮想通貨が世界に先駆けて定義され、仮想通貨と法定通貨との交換を行う取引所に登録制が導入された。また取引所には、取引所自身と顧客の口座を明確に分ける、分別管理が義務付けられた。こうした法整備によって、仮想通貨の取引に関する信頼性が高まり、取引量の拡大につながったのである。これは、適切な規制は取引の拡大を促すことを示す好例であろう。

他国でICOあるいは仮想通貨の監督、規制が強化されていく場合、果たして同様のことが起こるのか、あるいはICOや仮想通貨の取引の拡大に歯止めをかけることになるのか。2018年のICO、仮想通貨を展望する際の大きな注目点であろう。現状では、双方ともに考えられる状況である。


(注1)"Coin Offerings Hit Milestone Amid Warnings", Wall Street Journal, December 15, 2017
(注2)「英金融当局、ICO規制の是非検討へ『より深く調査』」、日本経済新聞電子版、2017年12月16日
(注3)「米SECがICOを阻止、仮想通貨投資の危険性を警告」、ロイター通信ニュース、2017年12月12日

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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