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財政健全化を装うヘリマネ的政府予算案

2017年12月18日

新規国債の発行額は8年連続で減額へ

12月22日に閣議決定される2018年度政府予算案の概要が見えてきた。一般会計の総額は97.7兆円と、2017年度当初予算から約2,000億円増え、過去最高水準に達する。これで過去最高水準の更新は6年連続となる。

他方で、政府の財政赤字額に対応する新規国債の発行額は33.7兆円程度と、2017年度当初予算に比べて約7,000億円の減額となる。当初予算での減額はこれで8年連続となる。このように2018年度政府予算案では、表面的には財政赤字は縮小傾向が維持され、財政健全化の姿勢が保たれているようにも見える。

持続可能でない経済と税収の好環境

しかし財政赤字の削減は、59.1兆円という2017年度当初予算から約1.4兆円も増える税収見積もりに支えられている面が強い。これは、バブル景気の影響で税収が伸びた1991年度以来、27年振りの高い水準である。この税収見積もりは2018年度の実質GDP成長率を1.8%程度というかなり高い成長見通しを前提としており、過大である可能性が高い。それに加えて、税収増加は昨年来の輸出主導による景気の上振れ、いわば出来過ぎた好条件に支えられているという点を理解する必要があろう。この経済と税収の好環境は持続的ではないだろう。

こうした点を踏まえれば、現時点での税収増加は財政赤字削減にもっと回しておくべきだ。この先、ひとたび景気情勢が悪化に転じれば、税収の増加率は急減し、財政赤字の拡大に繋がる可能性が高い。現時点ではそうした状況にもっと備えておかねば、長い目で見た財政健全化は維持できないのである。

遅れる社会保障費抑制の構造改革

一般会計の増加は、その3割超を占める社会保障費で、高齢化を映して医療費や介護費が膨張していることによるところも大きい。こうした構造的な歳出拡大に歯止めをかける、構造的な制度の見直しはなお十分になされていない。一般会計の3割超を占める社会保障費は医療費や介護費が膨張し、5,000億円前後増加する。防衛費なども増額する結果、これらの経費を合わせた一般歳出は58.9兆円前後となる。

金融緩和策に支えられた「ヘリコプターマネー政策」の色彩も

他方、新規国債の発行額の削減は、国債の想定金利が2年連続で1.1%の過去最低水準とすることによって、国債費が2017年度当初予算に比べて約2,000億円程度減少することにも助けられている。

しかしこれは、事実上、日本銀行の異例の金融緩和策が、財政支出の増加を助けているという構図となっており、「ヘリコプターマネー政策」の色彩を帯びている。それは、財政の規律を低下させることで、財政政策と金融政策の信認を同時に低下させ、金融市場の動揺を招くリスクを孕んでいると言えるだろう。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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