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IMFの中国金融改革提案

2017年12月11日

IMFが中国の金融セクターを評価

国際通貨基金(IMF)は12月6日、中国の金融システムの脆弱性を指摘したうえで、銀行の資本増強などを提言する報告書(注1)を公表した。これは、金融セクター評価プログラム(FSAP)に基づいて、IMFが中国の金融セクターを評価したものである。このプログラムは、加盟国がその金融セクターでシステミックリスクにつながる問題を理解すること、金融システムの安定性を高める政策対応を実施することを助けることを目指している。

変わる中国金融セクターの役割

同報告書では、中国が輸出、設備投資主導で高成長を遂げる中で、金融セクターの果たしてきた役割を評価している。それは、個人の潤沢な貯蓄を集め、低い金利で重要な産業に貸出を傾けるというものであった。しかし、経済が個人消費など内需主導に転換していく中で、適切な資源配分はより市場原理に基づくものに変化してきており、その過程で生じる様々なリスクに対応しなければならないと指摘している。

また、現在の中国の金融セクターは安定を維持しているものの、この先成長率がさらに低下していく中では、金融システムの脆弱性が高まることから、追加的な対応が必要である、ということが主張されている。

銀行の自己資本増強が必要

中国の銀行は、バーゼルⅢの自己資本比率の基準を満たしているが、先行き成長率が低下していく中、不良債権が増加し、この基準でも自己資本が十分とは言えない。IMFは、今後明確な目標を定めて、銀行にさらなる自己資本の拡充を促す政策を提案している。

暗黙の政府保証の問題

銀行の自己資本増強に加えて、同報告書が強調しているのは、企業債務での暗黙の政府保証の問題である。特に地方政府はいわゆるゾンビ企業も含む特定企業を強く支援していることから、それが暗黙の政府保証の問題を生じさせている。その結果として、中国の銀行にとどまらず、海外の銀行、個人投資家がそれらの企業向け融資、投資に過剰なリスクをとっているのである。

しかし中国政府は、過剰な企業債務を促す銀行の融資を抑制する政策を既に取り始めている。その結果、企業の資金調達コストも上昇傾向にある。今後、暗黙の政府保証が取り除かれていく過程で企業の破綻が増え、それが銀行の財務を悪化させることで、銀行の資金調達に支障が生じる事態も考えられるところだ。

中国の金融システムの安定性、健全性を高める観点からは、暗黙の政府保証を解消していくことが必要だが、それが成長率の低下と重なる過程で、金融システムの不安定性が高まることも、IMFは懸念しているのである。

中国金融システムの安定性に世界は注目

中国の銀行セクターのバランスシートは現在、34.7兆ドルと、GDPの3倍強の水準に達している。それに対応する形で、中国企業の債務はGDPの165%まで増加している。こうした数字を見るだけでも、中国企業の過剰債務と中国銀行の過剰融資が、世界経済・金融の潜在的な大きなリスクであることが伺えよう。

(注1)People’s Republic of China : Financial System Stability Assessment-Press Release and Statement by the Executive Director for People’s Republic of China

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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