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ハード・ブレグジットを警戒する大陸欧州銀行

2017年11月29日

欧州大陸の銀行は英国向け資産を大幅削減

いわゆるハード・ブレグジットを警戒して、欧州大陸の銀行は、英国向け資産を急速に削減している(注1)。英国でEU離脱の国民投票が実施された2016年6月から2017年6月までの1年間で、欧州大陸の銀行は、英国向け資産を3,500億ユーロも削減した。これは英国向け資産の実に17%に及ぶ規模である。英国向け負債も概ね同規模削減されている。

こうした銀行行動の背景には、2019年3月の交渉期限までに英国とEUとの交渉がまとまらずにハード・ブレグジットになると、金融面での契約に関する法的な不確実性が一気に高まることがある。

高まるブレグジットへの警戒感

こうした数字を公表し欧州銀行監督局(EBA)のサーベイによると、3分の1の欧州銀行が、ハード・ブレグジットに伴う法的リスクを、経営上の大きなリスクに挙げている。特に懸念されているのが、デリバティブ取引、データ保護、訴訟に関わる手続きなどである。EBAは、こうしたリスクは、大陸欧州と英国の銀行との間での資金フローやサービスの継続性に大きな脅威となることを指摘している。

デリバティブに大きな不確実性

欧州大陸の銀行は、特に英国の銀行との間のデリバティブ契約のエクスポージャーを大幅に削減している。その削減幅は1年間で35%にも及んでいる。イングランド銀行(BOE)も、デリバティブ契約に関わる不確実性に今まで何度も警鐘を鳴らしており、ハード・ブレグジットの際には何らかの救済措置を講じることを主張している。英国の銀行が欧州大陸の銀行との間で結んでいるデリバティブ契約は、全体の2割程度にあたる200兆ユーロ規模に達しているとBOEは推定している。

ブレグジットが改善するEU銀行システムのリスク

EBAは、11月24日に公表した報告書 のなかで、EUの銀行セクターは、安定した経済、金融環境のもとで頑健性を高めていると評価している。また、資本の増強、収益性や資産の質の改善についても言及している。

しかしそうしたなかで、今後の欧州中央銀行(ECB)の金融政策の正常化策とともに、ブレグジットに伴うこのような不確実性が、欧州銀行システムの安定にとって新たに浮上した2つの大きなリスクであることも指摘しているのである。


(注1)"Europe banks shed UK-related assets", Financial Times, November 25, 2017

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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