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ドイツでは大連立交渉がまとまるか?

2017年11月28日

連立交渉が決裂

9月下旬の議会選挙後に、メルケル首相が率いる与党キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU、CSU)は、自由民主党(FDP)及び緑の党との連立(いわゆる「ジャマイカ連立」)を目指して交渉を進めていたが、今月19日になって決裂した。与党と比べて右寄りの自由民主党と左寄りの緑の党と同時に連立交渉を進めることには、当初から困難を伴うことが予見されていた。とりわけ、環境問題と移民問題では、三者間での調整は難しかったとみられる。また、自由民主党は、連立政権に加わることで独自性が低下し、国民からの支持率を失ってしまった社会民主党(SPD)の経験も考慮したのかもしれない。

懸念される再選挙の可能性

今後の展開としては、①与党との連立を拒否していた最大野党である社会民主党(SPD)との大連立、②与党単独での少数政権、③再選挙の実施、の3つのシナリオが考えられる。②の場合には、メルケル政権の政策運営が滞る可能性が高まろう。また、9月の選挙後も、各党の支持率には大きな変化が生じていないことから、③再選挙の実施に場合には、連立交渉がまとまらないという同様の事態が繰り返され、政治空白、政治混乱が長期化する可能性がある。さらに再選挙で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を増やすことも懸念されるところである。

大連立への期待

現状では、大統領が与党と社会民主党との大連立を目指して、社会民主党に働きかけている。社会民主党内でも大連立を支持する意見が、保守派を中心に高まっている模様であることから、①のシナリオが、現時点では最も可能性が高くなったように思われる。11月30日には、メルケル氏と社会民主党のシュルツ党首との会談が予定されている。

与党と連立交渉を続けてきた自由民主党は、マクロン仏大統領が主張する、ユーロ圏財務省創立などに反対の立場だった。このことから、大連立の成立は、欧州統合の深化という観点からはプラスの面があろう。

しかしそもそも、ドイツに現在のような不安定な政治情勢を招いた背景には、メルケル首相に対する国民の支持の低下がある。そのきっかけとなった移民受け入れに対する寛容策は修正される方向であるが、それがメルケル首相の政治的求心力を大きく回復させることにはならないだろう。

金融市場に悪影響も

欧州統合の深化という観点からは、2017年は、自国第一主義を抱える米国トランプ政権発足と英国のEU離脱という逆風の中で始まった。フランス大統領選挙でのマクロン氏の勝利で一時的に楽観論も広まったものの、マクロン大統領とメルケル首相の政治的リーダーシップが共に揺らぐ中、再び逆風が強まっているのが現状である。

こうした中、ドイツで大連立交渉が決裂し再選挙に向かう場合には、政治的不透明感が強まり、欧州統合に関するドイツの影響力が一段と低下するだろう。そうした場合には、ユーロの下落など、現在は落ち着いている金融市場にも明確な影響が生じるかも知れない。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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