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ハイイールド債に本格調整の前触れか?

2017年11月21日

ハイイールド債市場が調整入り

11月に入ってから、1.3兆ドルの市場規模を持つ、投機的格付けのハイイールド債(ジャンクボンド)の価格下落が目立っている。サーチ・フォー・イールド(利回り追求)の流れが強まるなか、過去数年はハイイールド債のスプレッド(国債利回りとの格差)は縮小傾向を辿り、他のアセットクラスと比べて高いパフォーマンスをあげてきた。足もとでの調整は、こうした好環境が終焉を迎えつつあることを意味しているのか、それとも短期的な調整に終わって、ハイイールド債ブームはなお続くのか、市場は注視している。

通信分野の銘柄が調整の中心

調整の中心となっているのは、米国通信企業のハイイールド債である。調整の引き金の一つとなったのは、スプリントとT-モバイルとの合併白紙であった。しかしそれだけではなく、通信分野では市場の飽和や価格下落圧力から収益環境悪化が従来懸念されており、株式市場では通信企業銘柄の株価の不振が以前から目立っていた。

個人マネーが調整を増幅するリスク

現状では、米国通信企業のハイイールド債、あるいはハイイールド債全体がパニックのような状態に陥っている訳ではない。またハイイールド債に本格調整をもたらす景気悪化の兆候や、金融市場での強いリスク回避傾向も見られない。今年3月に調整した際には、ハイイールド債への強い需要を背景に、短期間で調整は一巡したのである。

それでもハイイールド債の調整を警戒する向きが市場に多い理由の一つは、同市場では、ETFの形で個人投資家の影響力が強まっていることがある。そのため、通信分野の価格調整が、ハイイールド債市場全体に広まりやすいことが懸念される。さらに、個人投資家は一方向に投資行動が傾きやすく、それが過去数年はハイイールド債のブームを支えてきた一方で、ひとたび調整局面に入れば、その調整を増幅してしまう可能性がある。こうした市場の構造変化が、調整局面での過去の経験側を成り立たなくし、不確実性を高めている。

ハイイールド債のスプレッドは既に歴史的低水準に達しており、サーチ・フォー・イールドの動きは、行くところまで行った感もある。そうした中でのハイイールド債の調整は、金融市場全体がリスク回避(リスクオフ)傾向に転じる兆候となる可能性もあることから、その動向は当面目を離せないところだ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融

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